しかし、アマゾンでの出品をスタートさせた当初、仏教界との軋轢(あつれき)も生じた。106の宗派や仏教団体が加盟する公益財団法人全日本仏教会は「お坊さん便」がマーケットプレイスを設けていたアマゾンに対して、「宗教行為をサービスとして商品にしているものであり、およそ諸外国の宗教事情をみても、このようなことを許している国はない」とホームページ上で抗議文を掲載していた。「ECサイト上で儀式を販売する」ということで、宗教者や宗教行為が「商品」として扱われてしまうことへの危惧であった。
今春に全日本仏教会との対話で「アマゾン撤退決定」
双方、対話の機会もなくサービス開始から4年が経過した2019年春。よりそう側と全日本仏教会との対話の機会が生まれた。その中で、よりそうはアマゾンからの撤退を提案。全日本仏教会も歓迎の意向を示したという。
「アマゾンの掲載によって仏事の価値が誤って理解されてしまった。仏事が不要なら我々も不要になります。正確な価値を伝えるため、アマゾンを取り下げることに決めました」(同社)
一方、よりそうの撤退に関してアマゾンジャパンは次のように回答した。
「販売事業者さまの販売計画などについては、アマゾンとして回答いたしかねます。販売事業者さまがアマゾンへの出品の停止を希望される場合は、販売事業者さまご自身のご判断にて、出品を停止することができます」(広報)
よりそうは、今後は主に自社サイトでの案内に一本化し、コールセンターを使ってより丁寧な僧侶仲介につとめるという。
また、布施の精神や、僧侶の品質向上を両立させる新しい施策として、「おきもち後払い」という新サービスも新設する。これは、「お坊さん便」を利用した後、満足度が高い法要だった場合には、施主が「お気持ち」として料金に布施を上乗せできる仕組みだという。つまり、感動的な儀式を執り行った僧侶の「袋の中身」は、より多くなる可能性がある。
「水と油」仏教界と葬儀業界が「接近」した結果……
同社は「全日本仏教会との意見交換は実りのあるものでした。双方抱いていた誤解が解けたと感じています。『おきもち後払い』はお坊さんの質の向上にもつながると確信しています。わが社では利用者に対してその後、檀家や門徒になることを制限していません。『お坊さん便』を通じ、ぜひお寺の檀家さんになってもらいたいし、今後、仏教界との共存共栄を図っていきたい」としている。
これまで仏教界と葬儀業界とは「水と油」と言われてきた。それだけに、よりそうの仏教界への「接近」は稀有(けう)な出来事といえる。
多死社会を受けて葬儀市場は拡大傾向にある。しかし、家族葬や1日葬、直葬など近年、葬送の「規模」が縮小。葬送を担っている団塊世代の強いコスト意識も相まって、客単価は下降線をたどっている。僧侶派遣業も競合他社の参入が相次ぎ、価格競争にさらされている。そんななか、いかに質の高い僧侶を登録させるかが課題だ。
仏教界は仏教界で、寺離れが進む。僧侶が介入しない葬送や離檀も増えつつあり、寺院収入は減り続けている。新たな信者や檀家獲得は悲願だ。
葬儀業界、仏教界の双方が淘汰の時代を迎える中で、いかに連携し合い、足りない要素を補完し合えるか否か。それが「弔いなき時代」の生き残りのカギだ。
鵜飼 秀徳(うかい・ひでのり)
浄土宗僧侶/ジャーナリスト
1974年生まれ。成城大学文芸学部卒業。新聞記者、経済誌記者などを経て独立。「現代社会と宗教」をテーマに取材、発信を続ける。著書に『寺院消滅』(日経BP)など。近著に『仏教抹殺 なぜ明治維新は寺院を破壊したのか』(文春新書、12月20日発売)。一般社団法人良いお寺研究会代表理事。
(浄土宗僧侶/ジャーナリスト 鵜飼 秀徳)