台風19号

暗闇の3時間を8往復 幼稚園児ら64人を救出した水陸両用車の活躍

 救助方法は水陸両用車に8人ずつ乗せて冠水した区間を抜け、その先に待機した送迎バスで保護者らが待つ公民館まで運ぶというもの。このとき水陸両用車の運転を担当した新堀剛章(たけあき)消防司令補(36)は「普段から訓練はしているが不安はあった。水の流れや危険な冠水場所の確認をしつつ、細心の注意を払い操縦した」と話す。

 冠水した道路は起伏が多く、暗闇の中、水深を把握することは難しかった。新堀消防司令補によると水深1メートルを超える部分もあり、ベルトとスクリューを同時に使う場面もあったという。普段なら車で往復3分とかからない距離だが、救助には1回当たり20~25分を要した。園児と教職員合わせて64人を8回に分けて運び、全員を無事に救出したのは3時間後の午後9時すぎだった。

 救命胴衣を着て車両後部の荷台に乗るなど、慣れない雰囲気に怖がる園児もいたが、「隊員の皆さんが『心配しなくていいよ』とやさしく話しかけてくれたので本当に助かりました」と山下副園長。立石光江園長(59)も「無事な子供たちを見て涙が出そうになった」と話し、隊員らの活躍に感謝する。週明けに同園で開かれた「お誕生会」では、「大きくなったら消防士になりたい」と発表した園児もいたという。

 新堀消防司令補は「救助する前に子供たちの笑顔を見て、絶対に安全な場所へ運ぶという気持ちを再認識することができた。今後もおごることなく訓練に励み、邁進(まいしん)していきたい」と話している。

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