経済インサイド

業界5位の資生堂、“鬼門”再挑戦の舞台裏 米本社にM&A専門部隊

 資生堂が米化粧品メーカー、ドランク・エレファントホールディングスの買収に踏み切る。買収額は8億4500万ドル(約900億円)にのぼり、年内に手続きを終える予定だ。ドランク社は2012年創業ながら急成長を遂げており、米国進出の拡大を目指す資生堂にとって願ってもない買い物といえる。もっとも、米国は大型買収で苦汁をなめた“鬼門”の土地でもある。失敗すれば二の舞となるだけに、油断は禁物だ。

 ドランク・エレファントは、ヒューストン在住の女性起業家、ティファニー・マスターソン氏が立ち上げたブランドだ。アルコールや香料など、ドランク社が「サスピシャス6」と呼ぶ肌に悪影響のある原料を商品に含まず、天然由来の素材を使うことが多い。

 米国では人体への負荷が少ない「クリーン・ビューティー」が台頭しており、人気は欧州に飛び火しつつある。そうしたトレンドを担うメーカーの一つがドランク社で、18年の売上高は約80億円だったが、今年は約130億円に増える見通しだ。

 約900億円という買収額は、相手が誕生して間もないベンチャーであることを考えると、かなり思い切った金額といえる。米エスティ・ローダーや英蘭ユニリーバが有力との下馬評を覆した事実を考え合わせても、資生堂の本気度がうかがえる。

 資生堂は米国で、主力の「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」などを展開しているが、高級品が多く、販路は百貨店が中心。これに対し、ドランクは現地の有力化粧品専門店「セフォラ」と電子商取引(EC)に強く、00年以降に生まれた「ミレニアル世代」をはじめ、比較的若い層に人気だ。写真投稿SNS(交流サイト)「インスタグラム」などを使った販促にもたけている。

 資生堂は、買収で自社にない製品や販売手法を取り込めると判断。魚谷雅彦社長は発表翌日のアナリスト向け電話会見で「(ドランク社のことは)かなり前から興味を持って(買収を)検討していた」と述べた。

 日本や他のアジアでは圧倒的なブランド力を誇る資生堂だが、連結売上高約1兆1000億円に対し、欧米が占める割合は2割程度にすぎない。近年の成長の大部分は、インバウンド(訪日外国人)の追い風や、堅調な国内市場からもたらされたものだ。

 化粧品業界は、仏ロレアルとユニリーバ、エスティー・ローダーがトップ3を占める。資生堂は5位で、トップ3の一角に食い込むには欧米、特に米国の攻略が欠かせない。

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