ファッション業界もデータ活用本格化
AI(人工知能)やデータサイエンスの活用が、IT業界を越えて小売業界にも広がっている。ファッション業界においても、EC(電子商取引)での購買データを活用した商品推薦や、実店舗のPOS(販売時点情報管理)データを活用した取り組みをはじめデータ活用の流れが起こっている。AIエンジニアやデータサイエンティストは、これまで無縁だった業界でも活躍し始めている。(エアークローゼット社長兼CEO・天沼聰)
特にファッション業界はこれまでデータサイエンスの活用に後ろ向きだった。商品が消費者の感性によって選ばれるからだ。ファッションデザイン、商品化計画、生産、実店舗における販売のいずれにおいても、データが敬遠されがちだった。半面、データ活用に向けて大きな余地があり、さまざまな取り組みの可能性がある魅力的な業界とも言える。
実際、エアークローゼットでは、レンタルによって顧客に貸し出したアイテムに対する感想(フィードバック)のデータを収集し、次にその顧客に届けるアイテムをAIやデータサイエンスのサポートによりスタイリストが導き出している。また保有しておくべき最適な洋服の数やバリエーションを、これまでの蓄積データからシステムが自動的に導き出すといった活用方法も行っている。
なぜ、筆者がデータ活用に注目し、力を入れているかというと、データ活用が次の産業革命に値すると考えているからだ。これまで人類の進化に寄与してきた産業革命は全て、人類の「時間の圧倒的な短縮」を行ってきたと捉えている。
蒸気機関による第1次産業革命では人の「移動時間」を短縮し、電気・石油が工場に導入された第2次産業革命では、人の「生産時間」を圧倒的に短縮した。また、コンピューターによる第3次産業革命では、「計算・集計時間」を圧倒的に短縮した。そして筆者は、次にデータの活用による「検索・意思決定時間」の圧倒的短縮が実現し、これが第4次産業革命になっていくと考えている。それだけ、データは人類のこれからの発展においても重要な位置を占めることになるだろう。
こうした筆者の考えをもとに、エアークローゼットでは、データサイエンスチームを社長室内に設置した。直接経営陣とコミュニケーションを取りながら、データの活用を含む取り組みを積極的に行い、AIエンジニア、データサイエンティストの活躍の場を広げている。データを活用した活躍を目指す人材をさらに迎え、第4次産業革命に備えていきたい。
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【プロフィル】天沼聰
あまぬま・さとし 英ロンドン大学コンピューター情報システム学科卒。2003年アビームコンサルティングに入社し、IT・戦略コンサルタント。11年楽天に移り、UI/UXに特化したウェブのグローバルマネージャー。14年7月、ライフスタイルを豊かにしてワクワクが当たり前になる世界を目指してエアークローゼットを創業し現職。40歳。千葉県出身。