サスティナブルな取り組みを積極的に
エアークローゼット社長兼CEO・天沼聰
SDGs(持続可能な開発目標)が2015年9月の国連サミットで採択されたことにより、サスティナビリティー(持続可能性)に関する関心が高まっている。1つの製品をより多く利用する「モノのシェアリング」は、そのための有力な手段になるだろう。
経済産業省がまとめた資料によると、16年に日本で供給された衣料品は国外の生産分を含め約40億点。一方で、約30億点と想定される100万トンもの衣料品が廃棄されている。大量生産されて売れ残ったり、着られなくなったりした衣料品がそれに当たる。焼却すると大量の二酸化炭素が発生するため、環境へ与える影響は大きく、アパレル業界ではサスティナビリティーがより一層求められている。
「モノ」についてのサスティナビリティーは、素材や廃棄の有無はもちろん、生産されたものが「いかに使われるか」が大切だ。リユースなどを含めてシェアリングを行い、1着の衣料品が着用される機会を増やせば、無駄な生産をなくすことにつながる。そのため、「再利用が可能となるような、メンテナンスやクリーニングを含む循環型のモデル」を確立することが重要になる。
従来の小売りのみの概念だと販売は片道であり、循環型の仕組みがつくりにくい状況だった。それが、循環型の機能をもつファッションレンタルサービスの出現により、可能になった。エアークローゼットに対しても、ブランド各社からの取り組み打診のほか、大手繊維業者のモリリンがサスティナビリティーをテーマに開いた展示会に招待されるなど、問い合わせが増えている。
「2000年代に成人あるいは社会人になったミレニアル世代の約73%が持続可能性をうたった製品に注目している」という米ニールセンの「15年グローバル・コーポレート・サスティナビリティー・レポート」のように、ビジネス的にも地球への負荷を低減しようという方向性は価値がある。また、グローバル・ファッション・アジェンダが公表した18年のリポート「パルス・オブ・ザ・ファッション・インダストリー」によると、ファッション企業の約75%が直近の1年でサスティナブルな活動を増加・向上させている。
アパレル業界にとって大きな転換期と言えるだろう。エアークローゼットでは引き続き提携企業を募集するとともに、サスティナブルに対する幅広い取り組みを積極的に行っていく。
(この項おわり。次回からビジネスリノベーションの西村佳隆社長が、限られた予算の中で成果を出す「価値の再定義」について解説します)
【プロフィル】天沼聰
あまぬま・さとし 英ロンドン大学コンピューター情報システム学科卒。2003年アビームコンサルティングに入社し、IT・戦略コンサルタント。11年楽天に移り、UI/UXに特化したウェブのグローバルマネージャー。14年7月、ライフスタイルを豊かにしてワクワクが当たり前になる世界を目指してエアークローゼットを創業し現職。40歳。千葉県出身。