遊技産業の視点 Weekly View

一般化した呼称と呼ばせたい呼称

 □ぱちんこジャーナリスト・LOGOSインテリジェンスパートナー・POKKA吉田

 呼称とは社会において自由なものであるが、それをなんらかの都合で指定したいという思いを持つ人も大勢いる。ぱちんこ業界はそれが多い。

 「遊技」(産)業という呼称は業界内で一般化している。警察庁が認証する(総会時に来賓で課長、課長補佐、係長などが来る)業界14団体のうち、実に10団体が団体名に「遊技」を採用している。法律上の営業は「ぱちんこ屋」であるが「ぱちんこ」という名称は一つも採用されていない。「パチンコ」だけ一団体採用しているのみだ。

 ぱちんこ屋のことを「ホール」と呼ぶのも業界内では一般化している(ホール団体など)。また「ピーテン(P店)」などと呼ぶこともある。ところがどうも社会では違うらしい。今まで著書を何度も出したが「ぱちんこ」という表記については編集や校閲から必ず説明を求められる。出版社は「パチンコ(店)」と表記したいらしいのだ。

 一般化しなかった呼称もある。たとえば「パーラー」とか「アミューズメント○○」とかだが、一部の店の屋号に残っている程度であり普及しなかった。「ぱちんこ屋」と呼ばせたくないというメンタリティは「もうわれわれは個人商店ではなく企業なのだ」という自負でもあるのだろう。しかし、社会が何と呼ぶかは事業者や業界に決定権はない。提案はしてもたとえば「ホール」とは一般的には呼ばない。

 似たようなことは他の業界でもある。たとえば「ボートレース」。私は昔から「競艇」と呼んでいるが、業界はボートレースと呼ばせたい。こちらはテレビCMなどの影響もあって割と浸透している方だろう。なお法律では法律名にもなっているが「モーターボート競走」である。

 呼称を指定したいのは事業者や業界全体が社会からどのように見られるかを気にしていることの証左。呼称はときに事業者や業界のアイデンティティーを象徴する。しかしそれを指定させたいという思いの強さとは別に社会は自由だ。今後もぱちんこ業界と私は呼び続けよう。

                   ◇

【プロフィル】POKKA吉田

 ぽっか・よしだ 本名・岡崎徹。1971年生まれ。神戸大学経済学部中退。著書に『パチンコが本当になくなる日』(扶桑社新書)など。2016年2月より本名の岡崎徹としてぱちんこ業界紙「シークエンス」発行人編集長。

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