2020 成長への展望

新生産ライン稼働、製品開発に拍車 日本ゼオン社長・田中公章さん

 --2020年の世界経済と業績への影響は

 「最大の懸念は米中貿易摩擦だ。特に中国は個人消費も弱く、国がかなり力を入れて支えないと経済を維持するのは難しいのでは。中国では、合成ゴムなどのエラストマー素材事業を中心に影響が出つつある。今年はもっと強く業績に影響が出てくるだろう」

 --国内経済の見通しは

 「消費税率引き上げの反動が出てくるのでは」

 --ブタジエンなどの原料価格も気になる

 「ブタジエン価格はかなり強めで推移している。しかも海外のゴム市況は弱い。製品価格と原料価格のスプレッドが狭くなっていて当社にとって逆風だ」

 --国内外で新プラントなどが続々と立ち上がる

 「アクリルゴムはタイで生産能力5000トンの工場が3月から立ち上がる。4月には光学フィルム関連で敦賀工場(福井県)の生産ラインも稼働する。新しい設備ができて新製品の開発にも拍車がかかる」

 --中期経営計画で21年3月期に売上高5000億円以上を掲げる

 「20年3月期の売上高予想は前期比2.2%減の3300億円。目標を達成するだけの設備投資ができなかったことに尽きる。最後まで諦めずにやる」

 --主力の自動車関連は

 「ハイブリッドを含めたエンジン車は当面、インドや東南アジアを中心に増えていく。今後も特殊ゴムやアクリルゴムなどを展開していきたい」

 --低燃費タイヤ用の溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)は引き合いが強い

 「S-SBRはエンジン車だけでなく電気自動車(EV)でも使われる。これからも伸びていくとみている」

 --高機能素材事業は

 「一番大きいのはフィルム関連だが、リチウムイオン電池材料のバインダー(接着剤)などエナジー材料が今それに迫っている」

 --医療関連も成長市場だ

 「消化器系の止血鉗子(かんし)、クリップなどを順次上市予定だ。高齢社会で世界的に薬剤を使った治療の需要は高い。当社の高機能プラスチック(COP)を使ったプレフィルド・シリンジ(薬剤があらかじめ入った注射器)はタンパク質の吸着が少なく、透明性も高い。ガラスに置き換わる医療用容器として展開したい」

 --カーボンナノチューブ(CNT)は

 「CNTを使ったソーラー製品のテスト販売を行い、大きな反響があった。これからどう展開するかが勝負どころだ」

【プロフィル】田中公章

 たなか・きみあき 東工大院修了。1979年日本ゼオン入社。取締役常務執行役員、同専務執行役員などを経て、2013年6月から現職。東京都出身。

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