経済インサイド

伊藤忠にみる日本の人事制度への挑戦 マイナスイメージ変えられるか

 大企業にとって、バブル景気のときに採用された50代のシニア世代の活用が課題となる中、大手商社、伊藤忠商事の人事制度が注目されている。若手登用とシニア世代の活用を両立させ、それぞれの社員の働きがいや熱意を示す「エンゲージメント」を高めるのが狙いだ。

 伊藤忠といえば、朝方勤務へのシフトで残業を減らして仕事の効率性を高めたほか、「がんとの共生」を標榜(ひょうぼう)し、社員のがん治療と仕事の両立支援などを進め、働き方改革で存在感を示してきた。今回のシニア活用も、「出向」「転籍」というマイナスイメージのある日本企業の人事制度を変える役割を果たせるか注目される。

 伊藤忠は4月をめどに、課長や部長への就任年齢を引き下げ、若手を登用。一方で、シニア世代の人には、グループ企業や取引先などに仲介し、経験豊富なキャリアを生かしてもらう。

 若手を登用すれば、ポストを奪われるシニアが存在する。取引先や中小企業から三顧の礼で迎えられ、やりがいはあっても、中堅企業に転職すると報酬が大きく下がることもあり、それではモチベーションは下がりかねない。そこで、伊藤忠は、一定期間は差額の給料を補填(ほてん)する仕組みとした。

 伊藤忠は昨夏、消費関連を横断的に統合した「第8カンパニー」を立ち上げ、消費者目線でのコンビニエンスストア「ファミリーマート」の次世代改革や、新たなビジネスモデルの創出を模索しているほか、人工知能(AI)関連事業も強化している。鈴木善久社長は「若手の感性ややりがいを高め、組織を活性化する必要があり、そのためにもシニアのやりがいを見つけるのは会社の役割だ」と制度の狙いを明かす。

 伊藤忠の人事制度が注目されるのは、政府が進めている社会保障制度の見直しへの一つの回答となるからだ。

 政府は、社会保障の担い手を増やそうと、65歳までの雇用確保措置を企業に義務化している現行の制度について、70歳までの延長を努力義務とすることなどを検討している。

 これに対し、企業にとっては、「総論は賛成」であるものの、いかに本社の人員を適正規模に維持できるかが課題だ。最近、業績が好調でも希望退職を募る企業が増えている。背景には、将来の企業の適正規模人員を見据え、増えていくシニア人材をどうするか、という雇用調整の面もある。

 商社パーソンのシニア人材活用には、先行事例がある。業界団体の日本貿易会が平成12年4月に設立した、NPO法人の国際社会貢献センター(ABIC)の取り組みだ。活動会員約3000人(30年度末現在)のうち、約7割を商社の退職者が占めている。海外駐在を経験したメーカーや金融機関出身もいる。会員の85%が海外駐在を経験しており、海外進出したい中堅企業の輸出や進出支援のコンサルタントとして引っ張りだこだという。(上原すみ子)

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