IT風土記

関西発 全国の河川氾濫をベクトル型スパコンで6時間先まで予測

 RRIモデルは、京都大学防災研究所の佐山敬洋准教授が、土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)の主任研究員時代に開発した。佐山准教授は「2019年の台風19号や18年の西日本豪雨のように、各地で同時多発的に発生する豪雨災害に対しては、観測情報のない中小河川も含めて、広域を一体的に解析することが望ましい」と説明する。

 ただ、実際にシステムを構築する作業では、膨大な情報量をどう処理するかが大きなハードルとなった。通常のパソコンでは、緯度・経度に基づいて地域をほぼ同じ大きさの網の目にした「メッシュ」を作成する作業だけで、フリーズしてしまうほどだったからだ。「全国版氾濫予測に取り組む際に、高速計算が実施できる計算環境を整備することが重要だった」。近者部長はこう明かす。

 「ベクトル型スパコンでブレークスルー」

 課題を克服するために、三井共同建設コンサルタントが目を付けたのが、並列計算を得意とし、同時にさまざまなデータを計算・処理でき、気象予測領域で実績のあるNECのベクトル型スパコンだ。

 国立研究開発法人・海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、世界最大規模の大型計算機である「地球シミュレーター」を保有。その地球シミュレーターはNECのベクトル型スパコンで構築されている。そこで、三井共同建設コンサルタントは全国版リアルタイム氾濫予測システムの実現に向けて、JAMSTECに協力を要請。JAMSTEC付加価値情報創生部門・地球情報基盤センター・計算機システム技術運用グループリーダーの上原均氏と、同グループ技術主任の今任嘉幸氏、NEC技術者らが、スパコンの能力を最大限に引き出すためのチューニングに取り組み、洪水氾濫のシミュレーションプログラムの高速化を支援した。

 JAMSTECの上原氏はベクトル型スパコンについて「一時期、スカラ型スパコンが旋風を巻き起こし、ベクトル型スパコンに逆風が吹いていたのは間違いない事実。でも、世界的にはベクトル型に揺り戻しがきている」とみており、今任氏も「ベクトル型スパコンは並列計算に圧倒的に強い。NECにはベクトル型スパコンを貫いてほしい」と、世界で屈指のベクトル型スパコンメーカーに求める。

 全国版リアルタイム氾濫予測システムは現在、1時間先の河川氾濫予測を立てることが可能になっている。そして、NECの最新ベクトル型スパコン「SX-Aurora TSUBASA」を活用すれば、6時間先の予測もできる見込みという。先の予測が立てられるほど、住民が家族と連絡を取り合ったり、日頃服用している薬など大事な物をまとめたりして避難の準備をする余地が広がる。

 「NECのスパコンでブレークスルーした」。三井共同建設コンサルタントの近者部長は今回のシステム開発の経緯をこう表現する。もちろん、高速化に向けたチューニングの道のりも平坦ではなかったが、JAMSTECの上原氏は「社会に貢献できるならやってみようと奮起した」と振り返る。

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