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5G商用化 新型肺炎で「MWC」中止、日本勢に冷水 出展を見送る企業続出

 今月下旬にスペイン・バルセロナで開かれる予定だった世界最大級の通信関連見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」の中止が決まった。肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大で、出展を見送る企業が続出したためだが、今春に第5世代(5G)移動通信システムの商用化を控える日本の携帯各社は出ばなをくじかれかねない事態だ。世界では既に5Gの商用化が始まっており、日本を“周回遅れ”とする見方は根強い。MWCは技術力をアピールし、下馬評を覆す絶好の機会だっただけに今後の日本勢の発信力が試される。

 MWCには、NTTドコモや楽天モバイル、ソニーが出展を予定していた。中でも、ドコモは、吉沢和弘社長が基調講演をする予定だったため、担当者も「せっかくの機会が失われた」と落胆が大きい。スポーツ観戦やライブ中継などの娯楽やロボットの遠隔操作などの産業用途など、5Gのプレサービスの成果をアピールするはずだった。

 楽天の三木谷浩史会長兼社長も13日の決算会見で「世界の企業とかなり大きな発表をするはずだった。新しいグローバルプラットフォームになる可能性もある話だ」と悔しがった。

 大規模な国際見本市は、貴重な情報交換の場でもある。海外の先行事例や最新技術を知ろうと、関連企業の首脳が集まるからだ。新型肺炎の影響による中止で、世界中から参加する約2400社との商談のチャンスを失ったことにもなる。

 米国や韓国、欧州の一部などでは5Gの商用化が始まっており、中国、韓国の端末メーカーが対応スマートフォンを発売している。ただ、地域が限定されていたり、新たなサービスやそれに必要な周辺機器は打ち出せていなかったり、5Gの真価を発揮できていないのが現状だ。

 日本勢は商用化のスタートは遅れたものの、連携企業を増やしながら着実に実証を積んでおり、挽回のチャンスは十分にある。

 ソニーは24日に現地で予定していた記者発表会の代わりに、動画投稿サイト「ユーチューブ」で新製品を発表する計画。出展予定だった各社が今後、関係者が一堂に会する見本市を超える情報発信ができるか、注目される。(高木克聡)

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