論風
石炭火力問題への対応 鍵握るCO2の回収貯留実現の技術
ただ、ここで気になるのはこれからの計画分を含めて現存の石炭火力を停止するという選択を電力会社がどこまで受け入れるかである。というのは一旦稼働した石炭火力を燃料を他の化石燃料(たとえば天然ガス)に替えることは大きな設備投資が必要だし、稼働年限内に停止することは経済的に大きな損失となるからである。現在世界には「PPCA」と称する石炭火力の新設を一切行わないと宣言した電力グループがあるが、彼らも経済性を考えてか既存の石炭火力はその予定の稼働年数いっぱい運転することを計画している。この考え方をどうすれば変えさせられるかが今後の課題だろう。
また、これに代わる道として、排出するCO2の回収貯留、いわゆる「CCS」を実施する策がある。だが、CCSは現状ではその効果に大きな問題がある。というのは排煙中のCO2を吸収する吸収液から処理すべきCO2を取り出すのに大きなエネルギーを要するからで、従来よく使っていたアミン系の吸収液だと石炭火力発電電力の3~4割という大きなエネルギーが吸収だけで消えてしまう。現在筆者の研究所をはじめ関連研究機構がこのエネルギーの少ない吸収液の開発に力を入れているが、この技術開発がCCS利用の成功の鍵となることを強調したい。
【プロフィル】茅陽一
かや・よういち 東大工卒、同大学院修了。東大電気工学科教授、慶大教授を経て、1998年地球環境産業技術研究機構副理事長、2011年から現職。84歳。北海道出身。