新型コロナで「春商戦」に暗雲 桜・入学式…書き入れ時消滅で関連企業落胆の声
花見や入学式など、春の恒例行事に関連する需要を当て込んだ「春商戦」に暗雲が垂れ込めている。新型コロナウイルスの感染拡大でイベント自粛の動きが広がるほか、人が集まる場所への外出を控える消費者行動が定着しつつあるためで、関連商品やサービスなどを展開する企業は書き入れ時の一つを失った格好だ。
「昨年の同時期と比べるとかなり厳しい。訪日外国人の姿がほぼない」。例年、大勢の花見客でにぎわう上野恩賜公園(東京都台東区)近くの松坂屋上野店だが、14日のサクラ開花宣言後も客足が今一つで、担当者の言葉に力がない。
例年なら花見シーズンの入店客数は通常時の約3割増。弁当など食品の売り上げも2割程度増えるが、今年はイベント自粛の動きが拡大。11日から始まった花見弁当を集めた「うえのさくらフェスタ2020」の売り上げも低調で、「(販売個数の)目標も立てられない」と声を落とす。
東京の桜名所を巡るバスツアーを企画するはとバスは3月上旬時点での予約数が例年より少なく、担当者は「桜の開花で状況が変わってくれれば」と話す。プリンスホテルも例年ならば開花1週間前から伸びるはずの予約数が、今年は鈍いままという。
入学式中止の流れを受け、大学生向けや小中学生の保護者向けスーツの売り上げも落ちている。
紳士服大手の青山商事は11日、2020年3月期の連結業績予想を下方修正、最終損益が203億円の赤字(従来予想は20億円の赤字)の見通しと発表した。大学の入学式、企業の入社式を控えた3月は一大商機だが、中止を決めた大学の増加などを織り込んだ。
子供の卒業式や入学式に出席する保護者が着るセレブレイトスーツも「全て新型コロナの影響とは言い切れないが、足元の売り上げが昨年と比べ多少低調」(流通大手)と話す。
卒業式や送別会で3月は花束の需要が伸びる時期だが、イベント中止などで需要が減っている。現状を打開しようと日比谷花壇(東京都港区)は13日から毎週金曜日、通常1本200円程度から販売する切り花を100円(税別)に。担当者は「家の中で花を楽しんでほしい」と力を込めた。