原油価格低迷長期化 石連会長「見通しが難しい」
原油価格に上昇の兆しが見えない。新型コロナウイルスの感染拡大で需要が低迷するとの見通しから、ニューヨーク原油先物相場は3月下旬に1バレル=20ドルを割り込み、約18年ぶりの安値となった。その後は若干戻したものの、16日は前日に続き20ドルを再び下回った。背景には、一大消費地である米国にも感染が蔓延(まんえん)し、ガソリンや航空燃料を中心とした石油需要の回復が見通せないという、市場関係者の悲観がある。
「見通しが難しい」。石油連盟の月岡隆会長(出光興産会長)は17日、40年以上携わってきた石油業界でさまざまな原油価格の暴落局面を体験してきた中でも、今回の事態は特殊だと危機感を示した。
米国産標準油種(WTI)の先物は年初、60ドルを上回っていた。だが、1月から中国発の新型コロナの影響拡大で下げ始めた。3月に入ると、石油輸出国機構(OPEC)加盟国と非加盟国の連合体「OPECプラス」の減産交渉が決裂し、サウジアラビアが増産姿勢に転じると下げ足を速めた。
相場にけたぐりをかけたのは、トランプ米大統領が3月13日に出した国家非常事態宣言だ。世界最大のガソリン消費国である米国では、5月の行楽シーズン前に、米国内製油所が原油調達に動く。だが、外出禁止を受け動きが止まった。
足元の米週間石油統計でも、原油在庫が市場予想を上回り大幅に増加している状態だ。
記録的値崩れに、OPECプラスの参加国は再び歩み寄り、世界の供給量の1割相当の協調減産で合意した。だが、需要が3割落ちるなか「減産幅が不十分で需給バランスを是正するまでにはいたらない」(市場関係者)。特に落ち込みが激しい航空機燃料では、「(需要が)7割程度落ちている」(月岡会長)という。
国際エネルギー機関(IEA)は石油月報で、2020年の世界の石油需要が、前年比で過去最大の落ち込みになると予測する。
「これまでの価値観、仕事の仕方も含め、各国経済の運営が大きく変わる」
月岡会長は先行きを見極めている。