ボトムアップ型提案で社内変革 損保ジャパンが社員名簿刷新などで成果
損害保険ジャパン(旧損害保険ジャパン日本興亜)が3月から始めた社員名簿の刷新は、所属部署、職位など型通りの記載に加え、WEB上に社歴や得意分野、趣味など個人のプロフィルを公開し、社員が人材情報を自由に検索できるのが特徴だ。
同社は現在、社員が経営陣に直接プレゼンテーションし、社内変革を提案するプロジェクト「アイデアらぼ」を推進しており、社員名簿の刷新はその“産物”。社員約2万6000人の大所帯で接点がなかった社員同士が名簿上で業務、あるいは趣味など個人的な関心事で多種多彩な人材を見いだすコミュニケーションツールとして、「つながるシャイン」と名付けた。
プロジェクトのゴールを企業文化の変革に置き、創造性・独創性を発揮できる自由闊達(かったつ)な社風、決断と実行のスピードを尊ぶ文化の醸成を目指す。その先には、徹底した顧客の立場で考えた新たなビジネスや新商品・サービスを据える。
事業環境の変化について、経営側は「企業文化を変えなければ」と強い危機感を抱く。ただ、「トップダウンだけでは変わらない」と、ボトムアップ型の仕掛けを取り入れた。2018年度の開始以来、2年間で22件の提案があり、社員名簿刷新のほか、ジュニアやシニアを同社のファンに取り込むダンスプロモーション動画、カジュアルデーの創設など6件が、経営陣のお墨付きを得て実現した。
プロジェクト立ち上げに当たっては本社、本店営業在籍の社員から部署や職位も異なる約50人に趣旨を伝え、その後に新商品・サービス、既存業務・制度などの分野別にチームを作りアイデアを出し合った。検討テーマはメンバーそれぞれが直接携わる業務以外で「成長に資する、より良い会社にする」提案を基本に、社員の自主的な活動に委ねた。
経営陣の判断を仰ぐ提案にまでまとめるには通常業務外で集まり議論を重ねる必要があり、社員名簿刷新のチームは「社内合宿」を実施したほどだ。
完成した「つながるシャイン」では、上司、同僚ら本人以外の社員が第三者評を書き込めるアイデアを盛り込んだ。4月の人事異動の内示時期に運用開始が重なり、異動先の経験者から情報を得る手段、特に本社に初めて異動する地方勤務社員や海外に赴任する社員が利用したようだ。
また、仕事上のアドバイスを受けるメンター選びや愛好会結成などにも活用できる。
3年目の今年度について、同社は「スタートアップ企業とのセミナーやワークショップなど社外と触れ合う機会を増やし、新たな提案が生まれやすい環境をつくりたい」(アイデアらぼの事務局を務める経営企画部)という。社員のより積極的な取り組みを後押しする考えだ。