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医療機関、経営ピンチ 受診控え資材高騰、閉院も

 新型コロナウイルスの感染拡大により外来患者の受診控えが広がり、地域の病院や診療所の経営が圧迫されている。家賃や人件費などの固定費に加え、マスクや防護服などの医療資材が高騰、収支の悪化で閉院を考える医師も出てきた。専門家は「医療機関の経営破綻が相次げば感染拡大の第2波、第3波がきたときに対応できなくなる」と懸念を示す。

 「このままだと借金の返済もできず、閉院せざるを得なくなる」「家賃がつらい」

 東京都内の開業医らでつくる東京保険医協会が会員の医師に4月に実施したアンケート結果には悲痛な声が並ぶ。回答した約1200の医療機関の30%以上で、4月上旬の外来患者が前年同期比で半分以上減り、診療報酬も5割以上減少する見通しだ。

 「3月は300万円、4月は500万円の減収。自分の給料はないですよ」と語るのは熊本市で耳鼻咽喉科医院を経営する男性院長。マスクや消毒液はいまだに品薄で「感染者が出て患者の足が遠のくのが怖い」

 開業して間もない医療機関は特に厳しい。札幌市で昨年12月に開業した「南22条おとなとこどものクリニック」では3月以降、患者数が半分以下に。受付の人数を減らして固定費を削るが、小林俊幸院長は「長期化すると開業資金の返済が気がかりだ」と懸念する。

 厚生労働省所管の独立行政法人「福祉医療機構」は無利子・無担保の運転資金融資を開始。5月14日現在で1858件の申請があった。

 感染者を受け入れる大学病院や公立病院も危機的だ。医学部を置く国公私立の大学が参加する「全国医学部長病院長会議」の試算によると、80大学病院で4月の診療実績が続けば年間約5000億円の減収となる見通しだ。

 地域医療に詳しい城西大の伊関友伸教授(行政学)は「急激に小規模の医療機関の閉院が相次げば大規模病院に患者が集中して医療崩壊を招きかねない。過疎地では無医地区が生じる恐れもある。第2波に備えるため、国は医療機関に特化した手厚い財政支援を行う必要がある」と訴えた。

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