高論卓説

「第2波」で高まる雇用崩壊リスク 解雇か継続か、重大な岐路に

 企業支援、余剰人員生かす仕組み急務

 米国で新型コロナウイルス感染者が急増し、「第2波」襲来への懸念が高まり始めた。世界的に感染が再拡大すれば、2021年の世界経済も停滞が続き、日本経済にとってもマイナス成長の長期化につながる。652万人の休業者は満水のダムであり、景気悪化の長期化はダムの崩壊リスクを高める。

 25日の全米の感染者は3万9818人増となり、1日当たりの感染者としては過去最多を記録。テキサス州のアボット知事は同日、感染者や入院患者の急増を受け、州の段階的な経済再開を一時停止すると表明した。

 26日の米国株は第2波を警戒して大幅下落したが、さらに心配なのは実体経済の動向だ。国際通貨基金(IMF)は、世界経済見通しの中で第2波襲来のケースでは、21年の成長率がプラス0.5%にとどまるとの予想を示した。襲来しない場合はプラス5.4%の成長を見込んでおり、第2波がくるシナリオでは、世界経済に急ブレーキがかかるとみている。

 潜在成長率が0.5%程度しかない日本は、第2波襲来なら20年に続いてマイナス成長になる可能性が出てくる。IMF見通しでは20年の日本経済はマイナス5.8%。この発射台で21年もマイナス成長になった場合、大企業から中小・零細企業に至るまで、売り上げが損益分岐点を下回る企業が続出しかねない。

 株価に関しては、経営が悪化しても「日本銀行が社債を買うのでつぶれない」(大手銀関係者)との見方が台頭し、業績悪化イコール株価下落という図式にはなりにくい地合いになっている。したがって今後、日本にコロナ感染拡大の第2波が襲来しても、株価急落をきっかけにした信用秩序のスパイラル的な崩壊は起きにくい「歯止め」が形成されたとみることができる。

 そこで問題になるのが雇用だ。今年4月の休業者は652万人に上っている。企業が雇用調整助成金などを国から支給され、解雇せずに抱えている人数だ。雇用調整助成金は9月30日までの緊急対応期間を過ぎると、その後に支給されるのは年間100日が上限になっている。今のスキームでは今年12月に入ると連続支給の上限に到達する。つまり年末になっても業績が回復しない企業は、休業者を解雇するのか、それとも継続雇用するのかという重大な岐路を迎えるということだ。

 そこで、短期的対応として雇用調整助成金の支給期間を延長すべきだ。中期的に必要なのは新しいスキームによる資金貸付制度だ。アフターコロナの新しい社会生活のニーズに着目したニュービジネスへの参入者に対し、持続化給付金の交付に似た制度をスタートさせ、起業のバーを低くすべきだ。

 また、社会のIT化やリモート化が進むにつれ、物の配送を担う人材の確保が急務になる。この分野はコロナ問題の前から、人手不足が最も顕著だっただけに、人員が余剰になった分野からスムーズに人材がシフトできるスキームを構築することが喫緊の課題であると考える。困ったときの公共事業は、コロナ時代では通用しないことが判明した。新しい時代に適合した雇用政策をどうすべきか。政策当局や学識経験者だけでなく、民間の意見もすくい上げて、くるべき雇用危機に備えてほしい。

【プロフィル】田巻一彦

 たまき・かずひこ ロイターシニアエディター。慶大卒。毎日新聞経済部を経て、ロイター副編集長、ニュースエディターなどを歴任。東京都出身。

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