高論卓説

オンラインでの生活サービス続々 ウィズコロナへ新たな快適性訴求が鍵

 コロナ禍での生活により、家庭内でのIT活用が進んだ。家にいても仕事ができるように、リモートワークの導入が急ピッチで進む。社内や顧客とのオンライン会議はもちろん、採用面接や、大人数が集まるイベントやセミナーもインターネットを介して行われる。商品や資料の営業説明をオンラインで行う。「対面でのコミュニケーションが重要」との考え方は根強く、全ての業務が移行されるわけではないが、「目標を共有できて成果を出していれば、普段の仕事はオンラインでも問題ない。必要なときに対面で集まればよい」と考える経営者も増えた。

 オフィスを引き払い、全業務をリモートワークへ移行する企業も出始めた。当初は、パソコンの能力不足やセキュリティーの問題、通信回線の負荷や費用に関する問題が取り沙汰された。オンラインを介したコミュニケーションの取り方に対する戸惑いも見られた。しかし、時間とともに最適な方法を見つけて解決されていくだろう。

 仕事環境の変化に伴い、身の周りでデジタルサービスを使う頻度も増えた。出歩けないのだから、ネットの活用機会が増えるのは当然の成り行きともいえる。出前館やウーバーイーツなどの食事のデリバリーサービスは新型コロナウイルスが流行する前も成長していたが、今年になってさらに伸びている。

 部屋の片付けが進み、メルカリを始めとするフリーマーケットアプリを使うユーザー数が増えた。トランクルームのサービスも人気だ。すぐに必要のないモノを預けておくことができる。ゴルフクラブやスノーボードを預かってもらい、使う場所と日にちを伝えて届けてもらうサービスもある。クリーニング業者は、衣類や布団を洗って保管するサービスを提供する。冬物はかさばり場所を取るので大助かりだ。いずれもアプリで依頼すれば、業者が取りに来てくれる。

 ウィズコロナに向けて、家事代行サービスの需要も増加するだろう。掃除や食事だけではなく、子育て、買い物、部屋の整理まで多岐にわたる。アプリで時間と依頼内容を伝えればサービスを受けることができる。スマートフォンで施錠・開錠できる「スマートロック」のサービスと組み合わせれば、自分が不在でもサービスを受けることができる。業者の到着に応じてリモートで開錠し、終われば施錠する。防犯カメラを設置してモニタリング・録画できるようにしておけばセキュリティーも確保される。

 こういったサービスに対して抵抗感を持つ人もいるだろう。だが、「時間やスペースを有効活用したい、そのためには多少費用がかかっても良い」と考える人も少なくない。サービスに対する対価を、自分の中で正当化できているのだ。消費者の価値観は「モノからコトへ」へ変化してきた。それがこの環境とデジタル技術の普及により、さらに加速した。今後もサービスの質や信頼性は向上し、ユーザー数も増えていく。

 デジタルを活用した新サービスの立ち上げを目指している企業は多い。デジタル事業を推進することを目的とした部署や子会社をつくるケースも増えた。新サービスを提供するためには、デジタル技術の活用方法を理解した上で消費者を取り巻く環境変化を見極め、新たな快適性を訴求していくことが必要だ。その能力が、デジタル戦略組織を率いるリーダーには求められる。

 新しいことへのチャレンジを阻害するのは、過去の成功体験だ。これからの時代に合ったすてきなサービスが生まれることを楽しみにしている。

【プロフィル】小塚裕史

 こづか・ひろし ビジネス・コンサルタント。京大大学院工学科修了。野村総合研究所、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ベイカレント・コンサルティングなどを経て、2019年1月にデジタル・コネクトを設立し、代表取締役に就任。主な著書に『デジタル・トランスフォーメーションの実際』(日経BP社)。兵庫県出身。

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