ソフト・ハード、両方の知識持つ人材を育成
由紀ホールディングス社長・大坪正人さんに聞く
--日本のものづくりにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の課題とは
「3次元CAD(コンピューター支援設計)などソフトウエアが日を追うごとに進化を続けているのに対し、ハードウエアの世界は進化の速度がゆっくりだ。ものづくりの現場は失敗すると素材の調達が必要だったり、手間がかかることもある。だが、最も大きな原因の1つは、現場で加工に携わる人とソフトを開発する人との興味や関心の方向性がずれていると感じている」
--4月にファクトリーサイエンティスト協会を設立し、代表理事に就任した
「例えば、ものづくりの現場に携わる人がセンシング(計測)やマイコンの知識を得る機会があれば、抱えているものづくりの課題解決が一気に進むと思う。ソフトとハードの両方の知識を駆使して、ものづくりの課題を解決できるデジタル人材を育てたいと考えた」
--どうやって育てるのか
「2年前からデジタル人材育成のためのプログラムの開発に取り組んできた。具体的には、データエンジニアリング、データサイエンス、データマネジメントに関する知識を習得するための、オンラインの講座を開く。ただ聴講するだけではなく、講義を受けながら、受講生自身の手でプログラムを作成し、マイコンボードにセンサーなどを組み立て、ネットワークにつなげるところまでできるようにする。初年度となる2020年度には200人のファクトリーサイエンティストを養成したい」
--日本のものづくりの未来とは
「少子高齢化が進む中、日本でのものづくりは自動化や省力化で生産性を上げなければ生き残れない。日々の改善で、モチベーション(動機付け)が上がるような世界をつくりたい」
【プロフィル】大坪正人
おおつぼ・まさと 東京大学大学院工学系研究科産業機械工学専攻修了。2000年インクス入社。06年由紀精密入社、常務などを経て、13年社長。17年に由紀ホールディングスを設立し、現職。神奈川県出身。