高論卓説

病院経営悪化で「第2波」前に医療崩壊の危機

 東京都の小池百合子知事は2日に緊急記者会見を開き、都内の新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が急増していることを踏まえ「感染拡大要警戒の段階」と警鐘を鳴らした。(松崎隆司)

 政府は4月7日から実施した緊急事態宣言を5月25日に全面的に解除したが、その後東京では7月2日から100人超が続いている。感染者数がこのまま増加していけば、オーバーシュート(爆発的患者急増)を起こす恐れがあるため、都はこれまで確保していたベッド1000床を3000床まで増やしていくよう医療施設に要請している。

 しかし都内の病院は新型コロナの影響で全身傷だらけの状態が続いている。日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会の3団体が発表した「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況緊急調査(追加報告)」(調査期間は5月7~21日)によると、有効回答全病院のうち66.7%(前年同月は45.4%)が4月の医業収支で赤字、都内の病院は77.3%(51.1%)が赤字となっている。4月は病院の外来患者・入院患者ともに大幅に減少しているためだ。

 そのため、大病院などでは大きな収入源である手術も大幅に減少しているという。特に新型コロナ患者の入院を受け入れた病院はベッドを確保するために初診外来を断り、緊急性のない手術の延期や回数制限をかけたことで収益がさらに圧迫されている。

 新型コロナ患者用のベッドは4月1日に遡(さかのぼ)って1日1万6000円を上限に補助されるが、「通常の入院患者1人の診療報酬は1日5万円程度はかかる」(森田進・日本医療労働組合連合会書記長)といわれ採算割れ。しかも4人部屋であっても新型コロナ患者が1人いれば他のベッドは使えない。新型コロナ患者に対応するためには「通常の3倍程度、多いところは7倍の人手が必要だ」(森田書記長)といわれている。

 重症者は通常の入院患者の3倍の診療報酬を支払うことになっているが、現在都内の重症患者は数人で、ほとんど収益に貢献しない。これでは新型コロナ患者を受け入れれば受け入れるほど病院経営は圧迫される。既に東京女子医科大学では4月、5月だけで30億円の赤字となり、労使交渉では「夏季一時金(ボーナス)ゼロ回答」が示され、400人の看護師から退職希望の声が上がっているという。

 「4月より5月はさらに悪化している。病院への緊急的な助成がなければ、今後の新型コロナウイルス感染症への適切な対応は不可能となり、地域での医療崩壊が強く危惧される」(猪口雄二・全日本病院協会会長)という。「政府には昨年の診療報酬月額の概算払いを要求している」(森田書記長)と労使ともに窮状を訴えている。

 医療現場は今、情報や物資不足の中で医療従事者たちの使命感に支えられている。彼らの士気が低下すれば、それはそのまま医療崩壊につながる。新型コロナ感染拡大の「第2波」を前に政府や都をはじめとした地方自治体も医療機関に対して全力で支援しなければ医療崩壊を回避することは難しいのではないか。

【プロフィル】松崎隆司

 まつざき・たかし 経済ジャーナリスト。中大法卒。経済専門誌の記者、編集長などを経てフリーに。日本ペンクラブ会員。著書は『東芝崩壊19万人の巨艦企業を沈めた真犯人』など多数。埼玉県出身。

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