日産新型EVを再建の象徴に 「アリア」来年発売、ロゴも20年ぶり刷新
日産自動車は15日、スポーツ用多目的車(SUV)型の新型電気自動車(EV)「アリア」を、2021年半ば頃日本で発売すると発表した。10年前に世界初の量産EV「リーフ」を発売した先駆者として、世界で成長中のSUV市場でもEV化を先導する狙いで、衛星情報を活用した高度な運転支援など次世代技術も進化。大幅な販売台数減で巨額赤字に落ち込む中、ブランドロゴも約20年ぶりに刷新して、満を持した2台目のEVを再建への象徴としたい考えだ。
主力市場の日本で約10年、新車種が極めて少なかった中での発表で、内田誠社長は「単に新型車の一つではなく、日産の新たな時代の扉を開くモデル」と強調した。現行よりシンプルで未来的となるブランドロゴも同時発表するほど力を入れた。国の補助金を差し引いた購入時の負担額は500万円程度からとなる見込み。
ガソリン車の車台という制約があったリーフに対し、アリアはEV専用の車台から開発。大容量バッテリーを積みながらも床を完全に平面にできたことで、室内空間が格段に拡大。EVの弱点とされる航続距離も430~610キロとなった。
2モーターモデルは「GT-R」などのスポーツ車で培った駆動技術を融合し、1万分の1秒単位で制御する最新の四駆技術を搭載。加速性能は「フェアレディZ」並みとなった。
先進技術も多数盛り込んだ。アマゾンの音声アシスタント機能「アレクサ」を搭載、「ハローニッサン」の呼び掛けから、車内設備だけでなく自宅の家電のオン・オフも可能という。昨年導入した、高速道での一部手放し運転が可能な高度運転支援技術「プロパイロット2.0」は、日本版GPS(衛星利用測位システム)の準天頂衛星「みちびき」の情報を新たに活用。位置把握の精度が数十センチ単位に高まった。発売時期は未定ながら北米向けアリアから海外にも導入する。
14パターンある車体カラーのメインは、電線にも使われる銅の色。珍しい色だが、日産は「太陽が昇る瞬間の1日の始まりと、EV時代の幕開け」をイメージしたとする。
内田氏が「期待を込めた」とした狙い通り、15日の東京株式市場で日産株は前日比の7%高の418円となった。ただ発売はまだ1年先で、価格帯からしても爆発的に台数増に寄与する車種ではない。6月末に日本で発売した独自ハイブリッド技術搭載SUVの「キックス」は半月で8000台を受注し好調とするが、新型コロナウイルスの影響もあり20年度の業績好転はまだ見通せない。(今村義丈)