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欧州が抱えるジレンマ 「中国外し」進むほど中国から離れ難い現実

 新型コロナウイルスがサプライチェーン(供給網)における中国依存のリスクを浮かび上がらせた中、欧州で「脱中国化」を目指す動きが強まっている。ただ、企業からは中国を切り離せないとの声が根強く、域内で需給を完結させる難しさも伴う。

 欧州はこれまでも中国による巨大経済圏構想「一帯一路」への対抗措置として関税を課すなど、中国の影響力拡大の阻止に努めてきた。新型コロナ流行により脱中国の機運がさらに高まったことを受け、欧州連合(EU)は消費地に近いサプライチェーンの再構築に向けた取り組みを加速させている。

 医薬品など重点課題

 EUの行政執行機関である欧州委員会は総額7500億ユーロ(約92兆円)規模の経済再建策の一環として、主要産業セクターの「戦略的自立」の確保と、域内サプライチェーンの増強に向けて議論している。欧州は医薬品などの調達方法見直しを重点課題に挙げており、新たな製薬戦略ではコロナ危機中に露呈した域内生産能力の限界などのリスクに対処すると述べている。

 しかし、これを実行に移すのはそれほど簡単なことではない。ドイツの後発薬(ジェネリック)大手、シュターダ・アルツナイミッテルによると、中国は医薬品有効成分の生産で世界の約40%を占める。シュターダの広報担当は「中国はサプライチェーンの重要な一部だが、当社はここ数カ月の間に保存可能期間が長い成分の在庫を増やすほか、調達先の多様化を進めている」と説明した。

 EU加盟国単位でもサプライチェーンの見直しが進んでいる。例えばドイツは生産の17%を国外の調達先に依存しており、サプライチェーンの回復力の強化が喫緊の課題となっている。同国はサプライチェーンの寸断リスクに対する主力産業の脆弱(ぜいじゃく)性を克服するため、今後数カ月以内に対策を発表する計画だ。この中で、地元製造業を守るため、調達先への人権・環境保護の取り組み状況に対する監視強化を検討している。

 域内への生産拠点の回帰が進む中、一部の加盟国では他の域内企業の投資誘致が活発化している。ポーランド、ルーマニアなどは西欧企業との結び付きや、ドイツより低い人件費を武器に企業の誘致を促進している。ルーマニアは現地法人の設立などで工場や販路を一からつくる、いわゆる「グリーンフィールド投資」を拡大するため、大企業向けの政府保証プログラムを策定中だ。

 製品の質の高さ評価

 ただ、皮肉にもこうした「中国外し」の流れが進むほど、中国から離れ難い現実が浮かび上がる。在中国EU商工会議所の調査によると、調査に応じた欧州企業の約9割が「中国市場から撤退することを検討していない」と回答した。

 その理由の一つとして、中国の労働者が手掛ける製品の品質の高さと生産コストの安さがある。1910年創業のイタリアの老舗靴メーカー、ジミー・バルディニーニの会長は「中国製のスポーツシューズは品質が良い」と指摘。中国での生産コストはイタリアより75%低く、「政府が(イタリア国内で)税金や人件費を劇的に削減しない限り、他に選択肢はない」状況だという。

 さらに、年々存在感を増している中国市場も無視できない。中国はドイツの自動車大手、フォルクスワーゲン(VW)の世界販売台数の約40%を占める。VWは5月、リチウムイオン電池メーカー、国軒高科など中国の電気自動車(EV)関連企業2社への出資比率引き上げを発表した。

 域内・国内への生産回帰を進める上ではコスト増の吸収も課題となりそうだ。オランダ中央銀行のクノット総裁は5月、地元テレビのインタビューで「私たちは近年、世界のサプライチェーンに過度に依存しており、効率を追求するあまり、供給システムのゆとりがなくなっている。他国への依存を減らし、さらに供給の安全を重視するときがきたのかもしれないが、そのコストは高くつくだろう」と指摘した。(ブルームバーグ Flavia Rotondi、Piotr Skolimowski)

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