高論卓説

耐えがたい壁に直面したときの対処法 「首尾一貫感覚」で考えて整理しよう

 「首尾一貫感覚」で心の視野広く

 先日、人気俳優が自宅マンションで死亡していたというショッキングなニュースが全国を駆け巡った。自死とも言われているが、その動機はまだ明らかになっていない。私たちは生きていく中でさまざまな壁(=つらい状況)にぶつかる。その壁があまりに高く圧倒されそうなとき、「死にたい」という思いが頭をよぎることは無理からぬことである。

 私たちがいま直面している新型コロナウイルスも、一人一人にとって大きな壁だといえるだろう。実際に感染したり、事業が行き詰まったりしている人にとってはもちろん高い壁であるし、そうでない人も、社会全体を覆う閉塞(へいそく)感に壁を感じているかもしれない。

 現在、感染拡大第2波への警戒が続くなかで、程度の差こそあれ私たちは壁に直面しているのだろう。壁に直面したとき、私たちはストレスにさらされる。このストレスが、心身の不調や病気の原因になり、自死につながることもある。

 では、ストレスをコントロールするにはどのようにしたらよいのか。ストレスマネジメントで重要なことは、まずストレスをセルフモニタリングすることである。自分はどの程度のストレスを抱えているか、普段どのようなストレス解消法を用いることが多いかに気づくことが、セルフモニタリングである。

 ストレス解消法は、ストレスマネジメントに関する知識を吸収していくことで、種類を増やすことができる。そういった知識は自分で積極的に求めることが必要だが、ここではストレス対処力とも呼ばれる「首尾一貫感覚」を取り上げたい。

 首尾一貫感覚とは、第二次大戦中のナチスドイツ強制収容所から生還しながら、更年期になっても良好な健康状態を維持していた女性たちが持っていた次の3つの感覚である。

 【1】把握可能感(「だいたいわかった」という感覚)…自分の置かれている状況や今後の展開を把握できると感じること

 【2】処理可能感(「なんとかなる」という感覚)…自分に降りかかるストレスや障害にも対処できると感じること

 【3】有意味感(「どんなことにも意味がある」という感覚)…自分の人生や自身に起こることには意味があると感じること

 「処理可能感」の裏付けとなるのは、人脈やお金、権力、地位、知力などの“資源”で、それらを実際に活用することで、「把握可能感」を高めることができる。災害や病気など大きな壁に直面したときに必要になるのが、「どんなことにも意味がある」と思える「有意味感」である。

 どうしていいか分からなくなって悩んでいるときは、3つの感覚のいずれか、または全てが低くなっていることが多い。壁に直面し、「だいたい分かった」とか「なんとかなる」とは思えなくなったときは、誰かと助け合うことで把握可能感や処理可能感が持てるようになる。さらに「この壁は乗り越えるべき価値がある」と、そこに「意味」を見いだすことができれば有意味感が持て、大きな成果を上げる原動力につながることもある。

 耐えがたい壁に直面したとき自死という対処法を選択してしまうのは、孤独に思いつめた結果、心の視野が狭くなってしまうからだろう。そういうとき「首尾一貫感覚」という視点から考え、どのようにしたら乗り越えられるか整理してみることで、解決の糸口がつかめるかもしれない。

【プロフィル】舟木彩乃

 ふなき・あやの ヒューマン・ケア科学博士。メンタルシンクタンク副社長。筑波大大学院博士課程修了。著書に『「首尾一貫感覚」で心を強くする』(小学館)がある。千葉県出身。

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