高論卓説

牽引役不在の日本経済 頼みの自動車産業に販売減速の懸念

 2020年4~6月期の国内総生産(GDP)は前期比で年率27.8%減と戦後最悪の落ち込みとなったが、問題は7~9月期以降の展開だ。米グーグルやアマゾン・コムが不在の日本は、本来なら新型コロナウイルス禍で勝ち組のIT産業のパワーが弱いのが特徴だ。(田巻一彦)

 平時であれば強い自動車産業も、現在計画している回復シナリオが欧米の感染拡大が収まらずに下振れた場合、負け組に転落するリスクがある。日本のこうした構造的な脆弱(ぜいじゃく)性を、カネ余りを享受するマーケットが十分に織り込んでいるとは思えない。日本経済の実態と株価のギャップがじりじりと広がっている。

 今回のGDPを大きく押し下げたのは、個人消費が前期比8.2%減と大幅に落ち込んだことが影響している。コロナ感染の抑制を目指した政府の外出自粛要請で、外食、旅行、交通関連の支出が大幅に減少した。

 また、消費の源泉である所得が、テレワークの普及などで残業代の減少を招き、6月の所定外給与は前年同月比24.6%減となり、実質賃金も1.9%減に沈んだ。この傾向は継続することが見込まれ、10万円の定額給付金の効果が剥落する8月以降は、さらに所得面での「不安感」が醸成されやすくなると予想される。

 富士通のようにテレワークを原則とする企業が続出すると、オフィス需要の減少は避けられず、不動産業界が受ける打撃も正確に把握する必要がある。テレワークが拡大するなら、足元の決算で収益の悪化が分かった東京メトロや大都市圏の通勤需要を支えにする私鉄各社の受ける影響も長期化しかねない。

 一方、これから製造業が挽回局面に入り、生産を起点に外需は戻していくと予想する声が多い。その期待の中心は自動車だ。確かに中国での自動車需要は、世界の中で最も順調に回復しており、中国の回復が米国や欧州に波及すれば、自動車を起点に日本の製造業は順調に回復していくシナリオを描くことができる。

 しかし、米国ではニューヨーク州以外はコロナ感染拡大の影響を受け、経済活動にブレーキがかかっており自動車販売の先行きは不透明感が強い。欧州でも感染再拡大への懸念が強まっており、消費動向に対する楽観的な見方は後退しつつある。

 このようにみてくると、コロナ感染の拡大基調が世界規模で長期化した場合、日本経済の牽引(けんいん)役であるはずの自動車産業が受ける打撃は決して小さくない。

 さらに、社会的距離を取る環境変化を「追い風」にして株価を上げてきている米巨大IT4社「GAFA」のような勝ち組企業が、日本では見当たらない。コロナ感染が長期化した場合、サービス業を中心とした負け組から放出される「解雇従業員」の大きな受け皿が、日本では少ないことが一目瞭然だ。

 政府内では、失業者の急増を食い止める「ダム」の役割を果たしている雇用調整助成金の支給期限を9月末から3カ月程度、延長する方向で検討が進んでいるもようだ。12月末に同助成金を打ち切ることになった場合、かなりの失業者が出てしまうことは避けられないだろう。

【プロフィル】田巻一彦

 たまき・かずひこ ロイターシニアエディター。慶大卒。毎日新聞経済部を経て、ロイター副編集長、ニュースエディターなどを歴任。東京都出身。

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