高論卓説

シニア起業家が救う「コロナ危機」 日本型企業の「新陳代謝」担い手に

 新型コロナウイルスが落とす暗い陰が、日本経済を日増しに覆っている。実質GDP(国内総生産)は年率換算でマイナス27.8%減となって戦後最大の減少率である。東京・霞が関の官庁街は、8月末に迫っている来年度予算の概算要求作りに取り組んでいる。「コロナ危機」の経済、雇用状況を受けて、中小企業政策の占める位置は大きくなる。(田部康喜)

 2020年版の中小企業白書と小規模企業白書によると、年間4万社以上の中小・小規模企業が休廃業・解散している。産業再生機構のCOO(最高執行責任者)を務めた、経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO(最高経営責任者)の冨山和彦氏は、『コロナショック・サバイバル』(文藝春秋社刊)の中で述べる。

 「今度こそ、この危機を乗り越え、同時に日本社会のさまざまな次元でじわじわと進行してきた課題、『基礎疾患』の根治を始動する機会としたい。私たちの覚悟の行動、200%分の働き次第で『日出づる国日本』が30年ぶりの上昇に転じる時代は必ずやってくる」「米国のベンチャー経済史もそうだが、ベンチャー・エコシステムもこういう危機で鍛えられ、さらに上のステージに進化する。日本のベンチャー・エコシステムもそれなりのところまで成長してきた」と。

 筆者はシニアのベンチャーに注目したい。日本政策金融公庫が18年に実施した「新規開業実態調査」によると、起業した人の開業時の平均年齢は43.3歳。20代までの7%は60代の比率と同じだ。50代も19%、トップの40代が35%で30代の32%が次いでいる日本の電子書籍の先駆けとなった、イーブックイニシアティブジャパンを00年5月の40歳直前に共同創業した、高嶋晃さん(61)は16年11月に新社「team S」を立ち上げた。新社名に込められた「S」は1984年に入社して、最初の起業をするまで商品開発や経営企画畑で働いた、シャープに対するオマージュである。

 アンドロイド型スマートフォンとWi-Fiによって連動する、有機ELを素材にした新しい形の映像装置の試作機づくりに最近、成功した。大きさは14型の厚さは0.3ミリ、補強材で裏打ちしても重量は30グラム程度。「電子書籍サービスを手掛けた当時から、端末の重さに耐えられなかった。それじゃあ、自分たちで作ってみようと考えた」と、高嶋さんは振り返る。投資ファンドの一つが、新社の時価総額を5億5000万円と見込んで、10%を出資した。

 中核メンバーは、シャープ出身の4人。社外取締役に元NTTグループの役員経験者や製造、販売などの専門家集団30人ほどがネットワークを組む。「電子立国日本の時代のシャープは、一つの製品を作るのにマーケティングなど約1000人が関わっていた。コミュニケーション手段が発達し、製造の専門企業が存在する今となっては、農耕社会といってもいいですね」と、高嶋さんは語る。

 コロナ時代の課題とされる、進化したデジタル技術を浸透させる「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は、シニアの起業家も乗り越えている。

【プロフィル】田部康喜

 たべ・こうき 東日本国際大学客員教授。東北大法卒。朝日新聞経済記者を20年近く務め、論説委員、ソフトバンク広報室長などを経て現職。福島県出身。

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