創業の地から消える「そごう」 関西唯一の店が31日閉店
百貨店「そごう」が、31日で関西から姿を消す。西神(せいしん)店(神戸市西区)が、同日で営業を終了するためだ。かつて関西に5店あったそごうの店舗は20年前の経営破綻後、次々と閉店。最後に残った同店も他の商業施設との競争激化などで、売り上げ低迷に歯止めがかからなかった。江戸時代に大阪で創業し、売上高で日本一になったこともある老舗百貨店が関西での看板を下ろす。(田村慶子)
ブランドへの愛着失う
そごう西神店は、神戸市の「西神ニュータウン」開発に合わせ、平成2年10月開業。市営地下鉄西神中央駅と直結している「地の利」や、地域に根差した店づくりで人気を集めた。
ただ、ここ10年ほど業績が低迷。事業譲渡の話もまとまらず、入居する建物を所有する神戸市から賃料減額支援を受けるようになった。だが業績は改善せず、昨年10月、親会社のセブン&アイ・ホールディングス(HD)が閉店を決めた。
令和2年2月期の売上高は107億4800万円とピーク時(平成8年2月期、257億円)の半分以下。平成19年2月期から13年、営業赤字を解消できなかった。
セブン&アイHDで百貨店事業を担うそごう・西武の広報担当者は「長年地元に愛された店だが、人口減や高齢化、他店への顧客流出もあり、これ以上続けても持ち直しは難しかった」と話す。社員は他店へ異動し、契約社員らは雇い止めとなる。
岩井コスモ証券・投資調査部の有沢正一部長は「地方の百貨店は厳しいといわれながらも、ここ数年は訪日客需要に救われた面がある。だが、西神店の立地にはその需要はないに等しい」と指摘。そごうについては「創業の地であるにも関わらず現在では強力な旗艦店がなく、消費者のブランドへの愛着心が失われていた」とする。
後継施設は双日が開発
そごう西神店の後継施設では、神戸市が運営事業者を公募した結果、大手総合商社の双日が優先交渉権を得た。同市によると当初5社が名乗りを上げていたが、コロナ禍での出店に懸念を示し、双日以外は辞退したという。双日は新たな複合商業施設に再生させ、来年11月末までの全面開業を目指す考えだ。
同店が入るビルの地下2階~地上6階のうち、1~6階が対象となる。1階は高級食品や進物などの売り場になる見通し。周辺のスーパーやショッピングセンターとの差別化を図る。
その他のフロアは同市との契約が正式にまとまれば、双日グループがテナント誘致を進める。同市の担当者は「アパレル、雑貨、家電などの大型店が入れば地元にも喜ばれるのではないか」と期待する。
残るは4店
そごうは1830(天保元)年、十合(そごう)伊兵衛が現在の大阪市中央区に開業した古着店がルーツ。大阪・心斎橋に移転したあと、1919(大正8)年に百貨店事業を本格化させた。
90年代には全国で約30店を展開する百貨店グループに成長。売り上げ日本一となるまで事業が拡大したが、資金繰りが悪化し、平成12年に経営破綻。18年にセブン&アイHDの傘下に入った。
その間に経営再建も進め、17年には閉店した大阪店を心斎橋本店として再オープン。復活の象徴として期待されたが4年後に閉店し、J・フロントリテイリング傘下の大丸(現・大丸松坂屋百貨店)に売却され「大丸心斎橋店北館」となった。現在は改装中で、今秋には「パルコ」を中心とした商業施設にリニューアルする。
関西では他に神戸店(神戸市中央区)も昨年に神戸阪急に衣替えし、西神店を残すのみとなっていた。
他地域でも徳島店(徳島市)が今月末、川口店(埼玉県川口市)が来年2月に営業終了予定。残る「そごう」は、横浜店(横浜市)、千葉店(千葉市)、大宮店(さいたま市)、広島店(広島市)の4店舗のみとなる。