高論卓説

コロナ時代、ベンチャーは特許を生かせ

 投資は減退、迫られるM&Aに効力

 新型コロナウイルス感染拡大がさまざまな経済活動に影響を与えている。企業の規模を問わず、この経済状況の変化に対応し適応していくことが、生き残る条件だと思う。ところで、コロナ前のベンチャー投資は、1年前くらいに絶頂を迎えて、昨年末くらいからやや下火になりつつあり、選別の時代に入りつつあるかと思われていた。(溝田宗司)

 しかし、このコロナによって、強制的に一気に選別の時代がやってきたと感じる。分野にもよるだろうが、一般的には、大企業による直接投資は減り、結果、多くのベンチャーがその影響を受けるだろう。その場合、どういった出口が考えられるか。

 日本では事業会社からの直接投資が多いという特殊事情も考慮すれば、倒産という選択肢は中々とりづらい。黒字化するのが困難であると予想される場合、損切りを覚悟で少しでもシナジーがある会社にM&A(企業の合併・買収)ができれば、御の字といったところではないだろうか。もちろん、コロナの影響でM&Aの件数自体も減少しているし、M&Aといっても結局は企業投資から別の企業投資に付け替えるだけのことなので、やはり容易ではないだろう。

 ここでキーとなるのが特許である。目立った資産が特許しかないようなベンチャーも多いと思うが、ベンチャーの保有する特許が、買い手にとって魅力的なものであれば、会社ごと積極的に買いにくる企業もあるだろう。特許の価値評価というのは、昔から考えられてきたことであり、特許庁や日本弁理士会からも詳しい解説が出ているし書籍も複数出版されている。

 しかしながら、筆者の知る限り、それほど典型的な業務ではないことから、例えば、特許取得までに要したコストをベースとするコスト・アプローチ、ロイヤルティーなど特許による収入をベースとするインカム・アプローチ、似たような特許の売買金額をベースとするマーケット・アプローチなどの算定手法の紹介やそれぞれの手法の説明は多数あるものの、どういった場合にどの手法をとるべきか実務的に固まっているとはいえない状況である。

 この点について、特許の侵害時の損害賠償(過去の侵害分の清算)については、特許法上、規定が設けられているし、裁判例も多数ある。このことから、他社による侵害が確実な特許については、それほど価値評価が困難ではないし、その他社がカウンターとなる特許を保有していたとしても、算定は可能であろう。そういった、侵害していると考えられる他社がいない場合、将来的にマーケットの状況を予想できるのであれば、ある程度算定は可能であろうが、全く予想できないのであれば、やはりその時点での価値は、コスト・アプローチによらざるを得ず、低額に抑えられてしまう。

 つまり、ベンチャーのM&Aにおいて、特許を軸とした売却を検討するのであれば、侵害している他社が存在するかどうか(およびその可能性)の調査が非常に重要となる。もし、侵害している他社がいるのであれば、権利行使もあり得るし、その他社に特許(ひいては特許を保有するベンチャー)を買い取ってもらうことだってあり得る。

 しかし、こういった調査を実施して積極的に特許を活用しているベンチャーは、多くないと思われる。特許は保有しているだけで模倣に対する抑止力になりうるが、それにとどまらず積極的に活用することをおすすめしたい。

【プロフィル】溝田宗司

 みぞた・そうじ 弁護士・弁理士。阪大法科大学院修了。2002年日立製作所入社。知的財産部で知財業務全般に従事。11年に内田・鮫島法律事務所に入所し、数多くの知財訴訟を担当した。19年2月、MASSパートナーズ法律事務所を設立。知財関係のコラム・論文を多数執筆している。大阪府出身。

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