高論卓説

広がる中国企業への米制裁 世界的な半導体の禁輸処置にも

 米中の技術戦争は、華為技術(ファーウェイ)から通信全般、そして、先端技術全体へと広がりを見せている。ポンペオ米国務長官は8月5日にクリーンネットワーク構想を発表した。これはクリーンキャリア、クリーンストア、クリーンアプリ、クリーンクラウド、クリーンケーブルで構成されているものであるが、要は中国抜きの通信環境を作り、それに対して、クリーンパス認証を与えるというものだ。

 そして、この認証制度に合格した者のみが米国との通信接続を許されるというものでもある。すでに第5世代(5G)移動通信システムではこの認証制度が採用されており、今後、全ての通信環境に広がる予定だ。

 米国からのTikTok(ティックトック)や微信(ウィーチャット)の排除と制裁、米フェイスブックやグーグルなどが参加する太平洋横断ケーブルの接続先変更もこの大きな計画の一部である。

 8月13日にはファーウェイや中興通訊(ZTE)、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)などへの完全排除が始まり、米連邦機関と取引を継続する下請けも含めたサプライチェーン(供給網)での不使用が条件になっている。これは日本企業も対象であるため、注意が必要になる。これらの一連の計画は、あくまでも米議会が定めた国防権限法に基づくものであり、政権が変わろうとも大きく方針は変わらない。

 また、8月17日、ファーウェイへの輸出管理も規制が強化された。対象は米国技術の割合が25%以上の製品だったが、少しでも含んでいればファーウェイに供給できないようにした。これは外国企業も対象である。原則、半導体など先端分野で米国技術を回避することは不可能であり、世界的な半導体の禁輸処置といえるものである。

 現在、半導体は、設計と巨額の設備投資が必要な生産の分業化が進み、大手メーカーでも製造はファウンドリー(半導体受託製造)と呼ばれる企業に委託している。設計には米国技術が必須で、生産も同様である。このため、米国技術が使用禁止になれば何もできなくなるのだ。

 さらに、今月4日、米国は輸出管理の対象に中芯国際集成電路製造(SMIC)を加える可能性を示唆した。

 SMICは中国最大手の半導体企業であり、世界5位のファウンドリーでもある。中国政府は『中国製造2025』で、半導体生産を世界一にする目標を掲げ、多額の支援を行ってきた。

 その最先端の企業がSMICであり、中国で唯一14ナノメートルという微細プロセスに対応できるファウンドリーである。そのSMICであるが、最大手の台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスン電子などに対抗するため、最先端の微細プロセスに対応できるオランダ・ASMLの製造設備を購入する予定であったが、米政府に輸出を阻止され、導入ができなくなっている。万が一、SMICにファーウェイ同様の制裁が加えられれば、SMICは活動停止に近い状態に追い込まれる。中国のさまざまなハイテク製品は製造できなくなるだろう。

 現在のところ、可能性を示唆した段階ではあるが、これまでの流れを見る限り、米国や日本など他国企業などへの予告ともいえるものだと考えた方がいい。米中のデカップリング(分離)は進んでいる。早急にサプライチェーンの精査と必要な対策を取ることをお勧めする。

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【プロフィル】渡辺哲也

 わたなべ・てつや 経済評論家。日大法卒。貿易会社に勤務した後、独立。複数の企業運営などに携わる。著書は『突き破る日本経済』など多数。愛知県出身。

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