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国内で約5兆円…インフラ点検ビジネス 異業種参入の背景に規制緩和

 【経済インサイド】

 高度経済成長期に集中整備された橋や道路、トンネルなどが一斉に老朽化する中、これらのインフラを点検するビジネスに、電機や精密機器メーカーの参入が相次いでいる。カメラや人工知能(AI)といった得意な技術を生かし、従来の目視点検では見つけられなかったひび割れや漏水、鉄筋の露出を検知する。新型コロナウイルス感染拡大で人材の省力化が加速する中で作業の効率化も図れることから、土木業界で異業種が持つデジタル技術への関心が急速に高まっている。

 キヤノンは昨年末、東京電力ホールディングス(HD)グループの東設土木コンサルタント(東京都文京区)と共同開発したインフラ点検サービス「インスペクション EYE for インフラ」の提供を始めた。高解像度を持つキヤノンの一眼デジタルカメラ「EOS」と望遠レンズでインフラのコンクリート面を順番に自動撮影。さまざまな角度から撮影された細切れの画像データを、手前に写る障害物の画像を除去しながらコンクリート面全体の画像に合成した上で、AI技術を使ってひび割れなどの異常を検知する仕組みだ。

 サービスでは、髪の毛の太さほどの幅0.05ミリメートルのひび割れを検知できるほか、目視では見間違いやすい汚れや目地を正しく認識する。さらに、土木技術者が半日がかりで画像データから約500本のひび割れを見つけ出し点検結果を作成していた作業が、わずか1時間半と8分の1に短縮もできるという。

 一連の「撮影」「画像処理」「変状検知」の3つのサービスは、顧客の要望に応じて部分的に利用することも可能。開発を担当したイメージソリューション事業本部の穴吹まほろ主幹は「他社製のカメラで撮った画像データでも対応できる」と強調する。

 同様のサービスは富士フイルムも「ひびみっけ」の名称で提供。医療用画像診断システムで培った高精度の画像解析技術などを活用し、平成30年4月からサービスを始めている。リコーは今年9月から、明るさ不足でも広くピントが合わせられる「被写界深度拡大カメラ」を搭載した一般車両を使い、走行しながらトンネル内のコンクリート壁面の点検を行う「トンネルモニタリングサービス」の提供を開始した。シャープは堺市の本社ショールームに高画質の8K小型カメラを搭載したドローンを展示し、インフラ点検への活用をアピールしている。

 異業種参入の背景にあるのはインフラ点検での規制緩和だ。24年12月に9人が死亡、3人が重軽傷を負った中央自動車道笹子トンネル(山梨県)の天井板崩落事故をきっかけに、政府は翌25年に「インフラ長寿命化基本計画」を策定し、インフラ点検を強化。国土交通省の資料によると、国内のインフラメンテナンス市場は約5兆円と推定され、点検ビジネスの活性化が期待されたが、その一方で従来の人手による「近接目視」を原則としたため、広がりを欠いた。そこで国交省は昨年2月、橋やトンネルの「定期点検要領」を改定。近接目視の代替手段としてAIなどの新技術が活用できることを明記し、門戸を拡大した。

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