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東証売買停止で風当たり強まる富士通、DX成長戦略に暗雲漂う

 1日に発生した東京証券取引所のシステム障害を受け、障害の原因となった機器を納めた富士通への風当たりが強まっている。原因究明の結果はまだ出ていないが、その内容次第では同社の評判まで傷つきかねない。人工知能(AI)などの新技術で社会やビジネスを変革する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を核とした新成長戦略に、早くも暗雲が漂い始めている。

 「障害の原因となった機器の納入、システム開発を担当する企業のトップとして、心よりおわび申し上げる」

 5日に富士通がオンライン上で行った事業説明会の冒頭、時田隆仁社長は神妙な面持ちで頭を下げた。時田氏が公の場でシステム障害に言及するのは初めてだ。いつもは企業文化を変える狙いから、Tシャツなどのラフな格好で登場することが多いが、この日はスーツ姿で、謝罪の場面ではネクタイを締めていた。

 説明会では、自社のDX推進に5年間で1千億円超を投じる方針が明かされたが、質疑応答では障害に関する質問が相次いだ。原因について時田氏は「(究明中で)申し上げる段階にない」とだけ述べた。

 障害は、東証の株式売買システム「アローヘッド」を構成するストレージ(外部記憶装置)のメモリーが故障し、バックアップへの切り替えもうまくいかなかったことで起きた。アローヘッドの設計・開発を手掛けたのは富士通で、ストレージも同社製の「エターナス」だった。

 今回のような障害が発生した場合、システムや機器の受注側に責任が及ぶことはあまりない。東証の宮原幸一郎社長も1日の記者会見で「(富士通への)損害賠償(請求)は現時点で考えていない」と述べた。

 ただ、東証の大規模システム障害は平成17年と24年に続き3度目で、富士通はそのすべてに絡んでいる。重要なシステムを相次ぎ任されるほど信頼されているともいえるが、トラブルは過去の実績を帳消しにしかねない。

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