高論卓説

AI開発や「コーシャ」生産…中東で勢いづくビジネス・観光交流

  アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンが、イスラエルと国交正常化の文書にそれぞれ署名する式典が9月15日、米国の首都ワシントンで開かれた。同式典では、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、UAEのアブダッラー・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン外務・国際協力相、バーレーンのアブドゥルラティーフ・アル・ザヤニ外相がそれぞれの2国間協定に署名したほか、これら3相とトランプ米大統領が合同宣言に署名した。

 注目されるのは、この6日前の9日にオンライン形式で開かれたアラブ連盟外相会議が、その時点でイスラエルと関係の正常化合意を結んでいたUAEを非難するパレスチナ自治政府の提案の承認を拒否したことである。これによりパレスチナ自治政府のアラブ世界での孤立が鮮明となってしまった。

 他方、勢いづいているのがUAEとイスラエルのビジネスである。例えば、UAE国営通信はムハンマド・ビン・ザーイド人工知能大学とワイツマン科学研究所(イスラエル)が、人工知能(AI)を新たな発展の道具として開発・使用する了解覚書(MOU)に調印したことを明らかにしている。イスラエル最大手のハポアリム銀行と、UAE最大手のエミレーツNBD銀行が相互協力に合意している。

 さらに、ドバイのDPワールドが、イスラエルのハイファ港の民営化にイスラエルのドーバータワーと共同入札することで合意し署名。ドーバータワーは、イスラエル造船所の株主でもう一つの港湾、エイラート港のパートナーであるイスラエルの実業家シュロミ・フォーゲル氏が所有している。

 こうした動きの中で最も目を引くのが、ドバイを本拠地とする中東最大のエミレーツ航空が発表した、ユダヤ教徒が食べてもよいとされる「清浄な食品」のことを意味する「コーシャ」食を自ら生産する計画である。エミレーツ航空は年末からイスラエル向けの運航を予定している。同航空のグループ会社エミレーツ・フライト・ケータリングは、既に外注生産によって飛行中のコーシャ食を提供している。しかし、驚かされたのは、今般同社がCCLホールディングスとパートナーを組んで、「コーシャ・アラビア」と呼称する新生産施設を来年1月を目途にUAE内に設立・運営する予定であることだ。

 コーシャについては、同じくドバイ拠点のアルハブトゥール・グループが、顧客にコーシャ食を提供するUAE初のホテル経営者となると発表していた。実際ハブトゥール・ホスピタリティーは、UAE内の調理場にコーシャ飲食品のサービス供給体制を構築することを目指しエリス・コーシャ・キッチとの提携を終えている。

 バーレーンもザーイド・ビン・ラシッド・アル・ザヤニ観光相が、イスラエルのアサフ・ザミル観光相とUAEを加えた3カ国観光パッケージ事業の可能性について協議している。また、バーレーンのカマール・ビン・アハマド運輸・通信相もイスラエルのミリ・レジェブ運輸相と、運輸部門でのパートナーシップの可能性について電話で協議している。

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【プロフィル】畑中美樹

 はたなか・よしき 慶大経卒。富士銀行、中東経済研究所カイロ事務所長、国際経済研究所主席研究員、一般財団法人国際開発センターエネルギー・環境室長などを経て、現在、同室研究顧問。東京都出身。

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