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10月8日は「地熱発電の日」 期待される無尽蔵の純国産エネルギー

 10月8日は「地熱発電の日」。わが国で最初の地熱発電所が運転を始めた日に、ちなんだものだ。再生可能エネルギーといえば太陽光や風力が代表格だが、電力供給が天候に左右される弱点がある。ところが地熱は昼夜・年間を通じて安定し、しかも化石燃料や原子力と異なり純国産で無尽蔵。火山が多く世界の「三大地熱資源国」である日本にとって、究極のエネルギーとして期待がかかる。

 23年ぶり稼働

 国内初の地熱発電所は昭和41年10月8日、岩手県八幡平市で運転を始めた松川地熱発電所(出力2万3500キロワット)。それから半世紀余りが過ぎた令和元年5月、同じ東北の秋田県湯沢市で山葵沢(わさびざわ)地熱発電所が誕生した。

 山形県境に近い山あいに、タービン棟などの建物が並ぶ。白い蒸気がもくもくと噴き出し、冷却塔では、くみ上げられた熱水がしぶきを上げて流れる。

 「昨年は、地熱発電にとって画期的な年でした」

 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)地熱事業部の高橋由多加さん(64)は感慨深げに話す。

 同発電所は出力4万6199キロワット。約9万世帯分の電力を供給できる。出力1万キロワット以上の大規模地熱発電所の稼働は、平成8年の大分県・滝上発電所以来、実に23年ぶりのことだった。

 「ベース電源」に

 23年の東日本大震災による東京電力福島第1原発事故は、政府のエネルギー政策を塗り替えた。エネルギー基本計画は自然由来の再生可能エネルギーを主力電源化すると明記。とりわけ地熱は、石炭火力や大型の水力、原子力とともに再エネで唯一、安定して安く発電できる「ベースロード電源」に位置づけられた。

 しかし、原発事故の翌24年に始まった再エネの固定価格買い取り制度によって太陽光発電のメガソーラーが爆発的に普及したのと対照的に、原発事故後、大規模な地熱発電所の新設は山葵沢のみ。施設数も事故前の18カ所・計50万キロワットから21カ所・計56万キロワットと微増にとどまり、いまだ100万キロワットの原発1基分に満たない。

 進まない背景として、開発に5年、10年単位の長期間を要することや、環境問題のほか、地熱資源のある場所が既存の温泉地と重なるため、温泉事業者から「温泉が枯れる」と反対を受けることなどがある。

 高橋さんは「地熱開発は、温泉事業者をはじめ地域住民との共生、合意形成が大前提」と説明する。

 地域の活性化に

 大規模な発電所の開発に時間がかかる一方、再エネ買い取り制度の恩恵を受けて一気に増えたのが、いわゆる「温泉発電」だ。既存の温泉施設を活用したバイナリー発電所と呼ばれる小規模な発電所で、原発事故後に全国で45カ所以上できた。温泉事業者が地熱発電への理解を深めるきっかけにもなっているという。

 また、地熱発電で出た余熱を有効活用し、北海道森町ではトマトやキュウリのハウス栽培を長年行っている。八幡平市では6月から、地熱とインターネットを活用した「温泉バジル」の出荷が始まり、雇用も生まれた。観光施設に足湯をつくった地域もある。

 高橋さんは「大都市の企業や住民だけが恩恵を受けるのでなく、地域の活性化につながる発電所づくりを進めていきたい」と話す。

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