季咲亭 小泉幸雄社長(51) 伝統と革新で静岡産漬物普及を
静岡の地場産野菜などを活用したお漬物の製造、販売で事業を伸ばす季咲亭(きさくてい)。小泉幸雄社長(51)は、漬物作りの伝統を守りつつ、改革と進化を図り、今の時代に求められる商品開発、さらには社会貢献にも力が入る。(那須慎一)
--なぜ起業したか。また企業理念は
「起業した平成19年当時、地産地消が求められており、当社としても静岡のお役に立てる事業展開を目指し、地場産のお漬物を提供することにしました。企業理念は『昔かたぎなOTSUKEMONO』で、1つは、日本古来の知恵と技術の詰まったお漬物作りを頑固に守り続けていく『伝統と継承』。2つに、伝統のお漬物でも季咲亭が手がけるとこうなる、というユニークで革新的な『改革と進化』。この2つの側面を持つ言葉になります。守るべきことは守りつつ、今のライフスタイルに合わせていくことを目指しています」
--現在注力している事業内容や主なターゲットは
「3年前に竹林の管理が行き届かなくなる『竹害』を知り、食べることで解決できるのではないかと思い、メンマ作りを始めました。今年、『静岡めんま』として本格的な販売につながりました。メンマの市場は、95%以上は輸入品とされ、漬物屋が乳酸発酵商品に加工した新製品の投入で、食物繊維豊富で植物性乳酸菌を手軽にとれる国産メンマがいつでも食べられる市場に変えていきたい。また、今後、ハンディキャップがある方や元気なシルバー人材の雇用創出も図り、みんなで作っていこうと考えています。国産を好む消費者ニーズに応えていきたいです」
--今に至るご苦労や思いは
「起業から約15年と歴史も浅く、誰かから引き継いだ会社でもない会社で存続し続けることは簡単に説明できません。つらい日々もあり、従業員には本当に頭が下がります。今も目標に向かい、達成していくことの繰り返しです」
--新たに取り組みたい事業や目標は
「日本古来より伝わる漬物とは乳酸発酵・食物繊維が豊富な点にあります。若者の漬物離れが聞かれる中、大切な伝統を守らなければならないことが大きな課題です。一方で、進化した当社商品の一つとして、自社ブランド『和ピクルスこうのもの』があり、販売力強化やブランド力向上に取り組んでいきます。この商品のEC(電子商取引)サイトでの販売強化や商品を使用した簡単レシピなどを紹介するホームページや料理サイト『クックパッド』の随時更新を行い、認知を高めていきます」
--ウィズコロナ時代をどう捉えるか
「市場状況が激変しており、ソーシャルディスタンス、ステイホームなど人と人が近い空間にいることを推奨しない社会になり、外食産業も冷え込んでいると聞きます。野菜の行き先が先細りになる中、外食産業に卸している農家や、さまざまな野菜を栽培している農家に対し、OEM(相手先ブランドによる生産)の形でピクルス作製などの提案を行い、お手伝いできるのではないかと考えています」
「長期的には、『静岡の漬物は季咲亭』と言っていただけるようにしていくことと、国産メンマ商品の販売増で、メンマの国産比率向上に寄与できたらと思います」
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■会社概要
・所在地 静岡市葵区沓谷5の1の6
・設立年月日 平成19年5月25日
・主な事業内容 漬物製造・食品卸
・従業員数 7人(令和2年9月現在)
・資本金 300万円(同)
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こいずみ・ゆきお
・生年月日 昭和44年10月2日
・出身地 静岡市
・最終学歴 飛龍高校卒
・主な職歴 商社勤務を経て、平成19年5月から現職
・趣味など スキューバダイビング