高論卓説

コロナ禍で定着したオンライン授業 IT、大学教育の場でも必須ツールに

  新型コロナウイルスによって、各大学はてんやわんやの大騒ぎであった。授業ができないのだから困り果てる。そんな中でも各大学は、無線LANとパソコンを駆使して授業を行う。日体大では、実技授業や実習が多いため、全ては行えないが、可能な限り座学は無線LANによるネットワークを用いて、パソコンで授業を行った。

 文部科学省調査によれば、後期に入ってからは、ほとんどの大学で対面授業が開始された。ただ8割の大学では対面とオンラインの併用だという。「3密」を防止するため、大学の施設によっては使用できない面もあろうが、教員と学生の対話が始まり、キャンパスが活気づきつつある。

 菅義偉政権は「デジタル庁」の設置を目玉に据えようとしている。コロナ禍によってデジタル化の必要性を認識したのに加え、働き方改革を推進する上でも重視せねばならなくなっている。大学教育の面にとどまらず、社会全体を見通しても、日本のテクノロジーの利用や浸透は欧米に比べて相当遅れている。私が1968年に米国へ留学したおり、新聞の求人広告は「プログラマー募集」一色だった。既にコンピューターが日常品となっていたのだ。

 パソコンを用いて国内初の授業を行ったのは、愛知県の知多半島にある星城大学である。新興の大学で学生募集に苦しんでいたが、2002年より「e-University」を目指す。急激な日本社会における高度情報化、および超高齢化の到来を見据え、最先端のITを大学の授業や学園生活に導入した。当時の事務局長だった今村裕氏に直接話を聞いた。「大学淘汰(とうた)の時代、生き残るにはイノベーション、ITを活用すべきだと考え、大学幹部を説得した」という。

 学生は入学時に無線LAN対応のノートパソコンを購入する。4年間使用するため、それほど割高ではない。メール、オフィスソフトなどの利活用は入学時から必須、ITリテラシーをたたき込まれ、技術の優れた学生たちが誕生する。ホームページの作り方などは朝メシ前、コンピューター好きの人材が育つ稀有(けう)な大学となった。それで450の各種団体、大学、企業や他の研究機関などが、メディアで再三大きく報じられたゆえ、見学に訪れたという。

 斬新な試みによって星城大は飛躍的な再生を果たした。しかし、見学に訪れた大学や団体は、星城大のごとく全員にノートパソコンを購入させるのに二の足を踏む。伝統校では、一気にイノベーションとはいかず、あちこちから反対の声が上がる。画面を通じて講義する経験も自信もない教授陣は、昔ながらの授業に時間を割くだけだったが、やっとコロナ禍で目を覚ます。

 学生たちは、ノートパソコンの中の電子テキストを使うが、授業の講義がつまらないと、ゲームを楽しむ。教員の指導力が問われるが、授業の質保証も問われる。「30分以内に、このテーマについて調査し、メールで報告せよ」と伝えると、学生たちは膨大な情報の中から必要で有益なものを抽出してまとめる。オンラインでの授業もやり方次第であろう。

 クラスターの発生を恐れながらも、対面授業を開始したが、オンライン授業が新型コロナ対策上だけのものにとどまらず、教育の質の向上と現実社会の必須のツールとして認識されなければならない。双方をうまく活用し、大学を本来の魅力ある教育の園に戻してほしい。

【プロフィル】松浪健四郎

 まつなみ・けんしろう 日体大理事長。日体大を経て東ミシガン大留学。日大院博士課程単位取得。学生時代はレスリング選手として全日本学生、全米選手権などのタイトルを獲得。アフガニスタン国立カブール大講師。専大教授から衆院議員3期。外務政務官、文部科学副大臣を歴任。2011年から現職。韓国龍仁大名誉博士。博士。大阪府出身。

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