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インフラ点検に異業種続々 規制緩和背景、AI技術で異常検知

 近接目視の代替手段

 異業種参入の背景にあるのはインフラ点検での規制緩和だ。12年12月に9人が死亡、3人が重軽傷を負った中央自動車道笹子トンネル(山梨県)の天井板崩落事故をきっかけに、政府は翌13年に「インフラ長寿命化基本計画」を策定し、インフラ点検を強化。国土交通省の資料によると、国内のインフラメンテナンス市場は約5兆円と推定され、点検ビジネスの活性化が期待されたが、その一方で従来の人手による「近接目視」を原則としたため、広がりを欠いた。そこで国交省は昨年2月、橋やトンネルの「定期点検要領」を改定。近接目視の代替手段としてAIなどの新技術が活用できることを明記し、門戸を拡大した。

 電機・精密機器メーカーにとっても、高いシェアを誇ってきたカメラや複合機などの市場が成熟する中で、中長期にわたり一定の売り上げを見込むことができるインフラ点検は新規事業として魅力ある市場。課題は、“新参者”として地方自治体などインフラの管理者からの信頼をどう得るかだ。公共事業の性格上、利幅も大きくはないため、撤退するメーカーは少なくなく、キヤノンの穴吹主幹は「顧客は100年続くインフラを維持するという意識を持っているので、『われわれもそういう覚悟を持ってやっている』と伝えている」と説明する。

 ただ、世界に目を向けると、インフラメンテナンス市場は約200兆円にも上ると推定されている。国内で培ったデジタル技術を活用したインフラ点検のノウハウを海外でも展開できるのか。そのチャレンジはまだ始まったばかりだ。(桑原雄尚)

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