高論卓説

米中「輸出管理」で始まる制裁 日本企業、年内めどに迫られる選択

 中国で17日、中国輸出管理法が成立し、12月1日から施行されることになった。中国では米国の輸出管理に対抗するため、今年に入り輸出管理法を作る動きが出ていた。そして、これがついに成立した。既に禁輸対象を規定するリストである「信頼できないエンティティ・リスト」の指針が示され、即日施行された。そして、輸出管理の対象品目を決める「国家技術安全管理リスト」も示された。

 今回の輸出管理法の制定は、規制や制裁を実施するための法整備ということになる。同法では、「総体国家安全観」を阻害するものを制裁対象とすると規定。具体的には(1)政治の安全(2)国土の安全(3)軍事の安全(4)経済の安全(5)文化の安全(6)社会の安全(7)科学技術の安全(8)情報の安全(9)生態の安全(10)資源の安全(11)核の安全-などを脅かすものが対象となる。

 これもあまりに概念的であり、中国政府の思惑次第ということになるだろう。また、禁止品目に関しても、IT、ハイテクなどを中心にバイオや医薬、医療関連もその対象とするとしており、その規制分野は他国でも代替え可能なローテク分野を除くほぼ全ての分野にわたっている。

 最大の問題は、これが国外でも適用されることだ。たとえ、日本企業であっても中国で研究開発したものは中国の輸出管理で許可を受けなくてはならず、日本企業が日本で生産していたとしても中国の技術が含まれれば管理対象になる。また、これは製品だけでなく、技術や情報も対象となるため、社内での人から人への技術情報の共有や伝達も規制される。それを破れば中国当局から厳しい制裁が待っている。

 中国輸出管理法は米国などの輸出管理を模倣する形で作られた。そして、米国は現行の輸出管理を強化する方針を示しており、ECRA(輸出管理改革法)を成立させた。また、旧西側国家の輸出管理の国際枠組み(ワッセナー・アレンジメント)も強化することで合意しており、日本でも米国の輸出管理強化と連動する形での輸出管理強化が行われている。

 また、米国はこれまで商務省や財務省など個別に行われてきた安全保障貿易管理をNSC(国家安全保障会議)に一本化する方針を示しており、年内には輸出管理の対象となる品目が20分野に増える予定になっている。

 そこで問題になるのが、日本企業の中国事業や合弁を含む中国での研究開発、そして国内での研究開発における中国企業との提携や中国人技術者、研究者だ。中国で開発された技術が国外で利用できないのであれば中国での研究開発の意味が失われる。逆に企業内での情報移動に制約が生まれ、日本の研究開発にも障害となる可能性が高い。同時に、日本での研究開発に米国の技術を利用していれば、中国に渡すことができない。これには人から人への技術情報も含まれるため、米国の輸出管理の対象範囲の拡大は研究開発にも大きな影響を与える。

 このような状況においては、企業の選択肢は米国を選んで中国を切り捨てるか、中国を選んで中国企業になり日本を含む西側市場を捨てるかしかない。米中両国ともに、運用次第だが12月には制度面での整備が終わり、実際の制裁が始まるとみられる。

【プロフィル】渡辺哲也 わたなべ・てつや 経済評論家。日大法卒。貿易会社に勤務した後、独立。複数の企業運営などに携わる。著書は『突き破る日本経済』など多数。愛知県出身。

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