高論卓説

早期実現望む「観光MaaS」 交通インフラ拡充、近隣へ分散後押し

 前回のコラム(9月16日付)では、新型コロナウイルス禍で再びクローズアップされると考えられる京都や鎌倉のオーバーツーリズム(観光公害)問題を取り上げた。解消するための戦略論として、(1)データに基づく実態調査の必要性(2)観光客の客単価の増額(3)観光の連続性を担保した観光客の分散が必要-などと提案した。(吉田就彦)

 特に第3の戦略に必須なのが観光MaaSである。MaaS(Mobility as a Service)は、未来の都市計画では欠かせない議論となってきている。そんなMaaSに地域の観光を連携させたスキームが観光MaaSだ。

 具体的に、鎌倉のケースで考えてみよう。年間2000万人の観光客を鎌倉から効率的に分散させて、新たな観光客受け入れの余地を残すためにも、観光MaaS戦略は欠かせない。2022年にはNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の放送を控えていることから急ぐ必要もある。

 まず、近隣の観光地へ分散させるには、その可能性を広げるターゲットをディスティネーション化させなければならない。大観光地・江の島の先にはめぼしい観光スポットが少ないため、隣接している東地区の三浦半島がメインターゲットになるだろう。三浦半島には運慶作仏像など歴史文化財も多く、海・山・川のレジャー資源も豊富で、食の豊かさもあるからだ。三浦半島を対象と考えたとき、その観光MaaS戦略が必要である。

 第1には既存の交通インフラの拡充と整備だ。鎌倉から三浦半島に人の流れを確保するためには、現状ではJR東日本の横須賀線と京急バスが中心となる。しかし、観光スポットへのアクセスが煩雑で、しかも広域仕様でないため、バスを乗り継いでいかなければならない。

 例えば鎌倉駅から三浦半島の西海岸側を、逗子、葉山と巡り、マグロで有名な三崎の城ヶ島までというようなバスルートはない。鎌倉駅から三浦半島に続くJR東日本の各駅と各観光地との接続も良好とはいえない。既存の交通インフラを観光型に変えていく必要がある。

 第2の戦略は海路である。鎌倉時代に三浦半島を席巻していた三浦一族は水軍を持っていた。それにちなみ、江の島から三崎港を回る西航路と三崎港から東の軍港ツアーを行う横須賀までの東航路を三浦水軍航路と名付けるのも一興だ。現在では西のマリーナ間での遊覧クルーズはあるものの全てがつながっていなく、移動をにらんだ観光客の受け入れ手段とはなっていない。軍港ツアーなどを行う関係者との連携と一気通貫した航路設置が期待される。

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