高論卓説

東証システム障害対策で提案 銘柄絞り手サイン売買の立会場復活

 東証のシステムに対する信頼は今回の株式売買の終日停止で大きく揺らいだ。再発防止に向け、バックアップ体制の強化などが進もう。金融庁も原因を精査し、厳しい行政処分を下す見込みだ。しかし、システムは無謬(むびゅう)ではない。ハードウエアは経年劣化する。隠れていたソフトウエアのバグ(欠陥)がささいなきっかけで表に現れ、ヒューマンエラー、ハッカーの攻撃などで今後もシステム障害が生じる事態は十分に生じ得る。

 市場に欠かせないのは信頼性とサステナビリティー(持続可能性)の確保だ。これを確保するのに有効な手立てがある。急がば回れで、いっそ立会場を復活させたらどうだろう。何も懐古趣味で全銘柄を立会場で売買する昔に戻れというのではない。電気がなかった昔に戻れないように、今やシステム無しでは国境を越えた大量の株式売買を処理するのは不可能だ。復活させる立会場で売買するのはTOPIX Core30の算出対象30銘柄に倣い、時価総額が大きく売買高が多い指標性の高い銘柄に絞ればいい。

 ニューヨーク証券取引所は超高速の売買システムを導入しても立会場を残した。フロアを慌ただしく動き回る場立ちは相場の息吹を伝える。楽観失望の感情の変化をあらわにする。日本でも立会場での株式売買がごく限定的にでも復活し、相場の“見える化”が実現すれば、個人投資家の何よりの株式投資への入り口となる。株式市場の活性化にもつながろう。

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【プロフィル】加藤隆一

 かとう・りゅういち 経済ジャーナリスト。早大卒。日本経済新聞記者、日経QUICKニュース編集委員などを経て2010年からフリー。東京都出身。

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