コロナ時代のスポーツ観戦はITも駆使 東京五輪想定の体操大会を記者が体験
来夏の東京五輪に向け、海外からトップ選手が集う体操の国際大会が8日、東京・国立代々木競技場で行われた。今年3月に延期が決まって以降、五輪競技としては初となる国際大会。収容人数の3割程度に絞られたものの、実際に観客を入れて開催された。来夏の本番を想定し、選手・運営スタッフを含めた来場者にはさまざまな感染防止、密回避対策が施され、最新のIT技術も試された。訪れた観客からは「安心して観戦できた」「対策を来年の東京五輪につなげてほしい」との声も聞かれた。(石原颯)
実際に観戦チケットを購入し、観客の一人として大会会場に入場した。感染拡大を防ぐため、観客1人1人には事前の体調管理の徹底が求められた。
スマートフォン向けの電子チケットの支払い時には「常時マスクを着用」などの注意項目に同意した者だけが購入できる仕組み。大会当日にもさらに「平熱を超える発熱(おおむね37度5分以上)がある」「嗅覚や味覚の異常がある」など感染疑いを尋ねる8項目の質問に1つでも該当した場合は、スマートフォンにチケットが表示されない工夫も施された。
国立代々木競技場には開場時間となる午前11時前から続々と来場者が訪れた。観客は入場口に6台設置された自動検温器の前に立ち体温を測定。平熱であるかどうかが確かめられた。
その後、観客は一定の距離をとって入場口の列に並んだ。チケットを確認する運営スタッフとの直接的な接触を避けるため、観客自身がその場でスマホの画面を操作して、チケットを「入場済み」である状態にしてから入場を許可された。
東京都練馬区の須藤美樹さん(39)は「感染の心配もあったが、対策を事前に示してくれたため、大丈夫ではないかと思い観戦を決めた」と待ちきれない様子で、娘とともに中に入った。
座席は全席指定。同伴であっても左右一席が空けられた状態で、密回避策がとられた。観客にはマスクの着用も義務付けられており、観客はマスクをつけて観戦した。試合中は選手が活躍する度に拍手を送ることもあったが、概して大きな声援をあげたりせずに競技を見守った。東京都中央区の50代女性は「トイレにもアルコールがあり、安心して観戦できた。(観戦を通じて)密になるようなことはなかった」と話した。
感染拡大防止対策としてスマホアプリのLINEを活用した対策も試された。仮に、観客の中で感染者が確認された場合、あらかじめスマホに登録した座席の位置からその感染者と濃厚接触した疑いがある人たちが特定され、注意喚起がスマホに通知される。
五輪本番だけでなく、「ウィズコロナ」時代のスポーツ観戦にはこうしたスマホ接触確認アプリの活用が標準装備にもなりそうだ。
この日の入場者は2094人だった。夫婦で観戦に来た横浜市鶴見区の会社員、鶴田裕文さん(54)は大会の運営について「座席も空いていたので感染しそうと思う場面はなかった。今後感染が広がらず成功となってくれれば来年の東京五輪・パラリンピックにつながると思う」と期待した。
サッカーのJリーグの観戦にもよく行くという東京都町田市の男性会社員(57)も「運営上の問題は感じられなかった。定員の50%ぐらいは十分、可能なのではないか」と話していた。