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ドコモ値下げで2社追随必至 主力ブランドのプラン刷新

 菅義偉政権の掲げる携帯電話料金の値下げをめぐり、NTTドコモが主力ブランドで値下げをする方針を固めた。政府の求めに対し、KDDI(au)やソフトバンクは傘下のサブブランドを使った新プランでの値下げを発表しているが、最大手のドコモが主力ブランドで値下げすれば、追随は必至。携帯電話料金の値下げ競争がさらに熱を帯びそうだ。

 「国民が(値下げの)実感を味わえるような環境を作っていただきたい」。ドコモの主力ブランド値下げについて、武田良太総務相は1日の記者会見でこう言及した。サブブランドによる値下げで政府の要求をかわそうとするKDDIなどへの牽制(けんせい)の意図がうかがえる。

 携帯料金の引き下げをめぐっては、KDDIとソフトバンクは10月末に、それぞれの主力ブランドのプランは変えずに格安のサブブランドで、データ容量20ギガバイトで月額4000円前後となる新プランを発表した。

 武田氏も当初は選択肢が増えることを理由にこの案を歓迎。しかし、主力ブランドの料金が変わらないことに対する国民の不満を敏感に察知すると、11月20日の記者会見で「主力ブランドでは新プランが発表されておらず問題だ」と軌道修正した。

 ドコモはこうした政府の意向も踏まえた上で、主力ブランドを含めた値下げを実施する。ドコモは現在、7ギガバイトを上限にデータ通信量に応じて毎月の料金が4段階に変化するプランと、30ギガバイトで7150円という大容量プランがある。ドコモ関係者によると、現在のプランを刷新、使ったデータ量に対して課金する仕組みを検討しているという。

 収益の柱である主力ブランドの値下げは、各社が回避したかった部分だが、ドコモが手を付けたのは「NTTによるドコモの完全子会社化を国に認めてもらうためのバーター」(関係者)との見方もある。

 苦しくなるのはKDDIやソフトバンクだ。現状では各社がほぼ横並びのプランを提供しており、ドコモが割安なプランを示せば、顧客をつなぎ留めるためには追随せざるを得ない。KDDIの高橋誠社長もドコモの値下げが「競争力のあるものだったら当然戦う」と述べている。

 ただ、取り得る選択肢は多くない。政府は20ギガバイトのプランで海外と比較し、高額な日本の携帯料金を問題視している。ただ、両社は20ギガバイトのプランをサブブランドで新設したため、主力ブランドで似たプランを作ろうとしても、サブブランドとの差別化が難しくなるからだ。

 ドコモはこれまで持たなかった格安ブランドも新設し、先行する2社よりも安い20ギガバイトを3000円前後で提供する考えだ。今年4月に新規参入した楽天はデータ使い放題で月額2980円というプランで注目を集めたが、価格面での優位性はなくなる。同社は「データ面での優位性はあり、値下げの検討はしていない」とするが、今後、契約が伸び悩むようだと、更なる対応を迫られる可能性も出てきそうだ。(蕎麦谷里志、万福博之)

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