サービス
山口発「電波維新」 技術革新が生むラジオ回帰への期待
同期放送の意義
このKRYの新技術が開発されると、成果を確かめようと、全国のラジオ局から視察が相次いだ。経営環境が厳しい全国のAMラジオ局は現在、電波の送信コストを抑えられるFM局への転換や併用をにらんでいる。チャンネルを変えないまま、AMの受信エリアを広範にカバーできる同期放送が実現した意義は大きい。ただ、惠良局長は「今もAMでラジオを聴いている人は多いし、FMでは聞こえない地域も残っている。当面はAMとFMの両方があった方がいい」と答える。
その一方で、FM補完放送のメリットも十分に感じている。「きれいな音声を聴き慣れている10代、20代の若い方も、音質がいいFMならばラジオを聴いてもらえるのではないか」と惠良局長は考えている。
ラジオ局の経営環境が厳しい背景には、インターネットメディアの台頭による広告収入の落ち込みがあり、インターネット上では「ポッドキャスト」のような音声コンテンツ市場が活況を呈している。こうしたリスナーは普段、こもったようなAM放送より高音質のコンテンツに触れており、ラジオは番組の質に加え、音質でもネットのコンテンツと張り合わなければならない。
いざというときに真価を発揮するラジオ。その存在が生活から薄れることがないよう、“電波維新”の取り組みは続く。