高論卓説

日本ブランドが中国で勝つには 良好なイメージ生かし“話題づくり”を

 1カ月ほど前のことであるが、今年も「ダブルイレブン(独身の日)」が開催された。毎年11月11日に行われる、中国最大級の小売商戦で、10月21日頃から予約販売期が始まり、11月11日の最終日まで、世界中のブランドがキャンペーンを展開し、商品を販売する。(森下智史)

 今年は例年と異なる前・後半の2部制となった。前半の購入代金払込期間の11月1~3日、後半の11月11日には数多くの消費者が予約した商品の手付金以外の残金を支払い、「尾款人(残金支払い者)」などという言葉が生まれた。

 商戦の結果は既に報じられている通り、アリババグループのEC(電子商取引)サイト「天猫(テンマオ)」が期間中に計4982億元(約7.9兆円)、ライバル「京東(JD・コム)」は2715億元と、合計すると日本円で12兆円以上のオーダー金額を計上した。

 トレンドExpressでは、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」上で「W11×買った」というクチコミキーワードとともに露出したブランド名を、上位30位までランキングにした。さらに、その30ブランドのクチコミ件数を「日本」「欧米」「韓国」「中国」の国・地域別に見たところ、実に48%が中国国産ブランドであり、2019年の45%から微増、逆に欧米ブランドのそれは19年の49%から42%まで縮小した。

 その隙間に飛び込んだのが韓国勢で、化粧品の「The history of Whoo(ザヒストリーオブフー)」と「Sulwhasoo(ソルファス)」の2ブランド。日本ブランドは「ユニクロ」と「資生堂」が昨年よりもクチコミ件数を伸ばし上位30ブランドにランクインしているが、全体の比率としてはやや減少した。

 こうした中で目を引くのが中国新鋭ブランドの伸長である。もちろん「ファーウェイ(華為技術)」「OPPO(オッポ、広東欧珀移動通信)」などのIT系、「ハイアール(海爾)」などの老舗は健在ながら、同時に「Perfect Diary(パーフェクトダイアリー、完美日記)」(化粧品)、「三只松鼠(3匹のリス)」(菓子)、「元気森林(ゲンキフォレスト)」(飲料)などの新鋭ブランドがクチコミ件数を伸ばし、天猫の発表する売上高ランキングにおいても上位に姿を見せている。これらの新鋭ブランドは、従来のマーケティング手法にとらわれず、SNS(会員制交流サイト)での情報発信、ハイペースでの新商品投入、デザイン刷新などを繰り返し、若者の心をつかんでいる。

 化粧品業界では、欧米大手ブランドも中国新鋭コスメブランドの急成長ぶりを既に注視している。これから中国に進出する日本のコスメブランドにとっても脅威となるだろう。

 ただ、こうした新鋭中国ブランドの「歴史的な積み重ねがない」という点も考慮に入れるべきだろう。いずれも立ち上げて数年。大胆な施策は打てるが、続けていく体力には課題がある。それに対して日本ブランドは、長年培ってきたブランドイメージ、信頼感が強みとなる。

 今後、中国市場で新鋭中国ブランドの「物量戦略」に対抗していくには、良好なブランドイメージや信頼感に加えて、戦略性を持った施策を実施する必要があるだろう。

 世界的な新型コロナウイルス再流行の中で依然大きな崩れを見せない中国消費市場。世界のブランドが注力する中、そこでより「大きな話題」を作り上げられるかが鍵となる。

【プロフィル】森下智史 もりした・さとし 中国トレンドExpress編集長。2015年まで17年間、中国・上海に滞在。上海では在留邦人向けのフリーペーパーの編集・ライター、産業調査などに従事。帰国後の18年に日中間の越境EC支援会社トレンドExpressに入社し、現職。

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