高論卓説

バブリーな臭い漂う21年株式相場 要注意、引き金は“不況期のカネ余り”

 2021年の株式相場がスタートした。4日大発会の日経平均株価は新型コロナウイルス感染の第3波の広がりへの警戒が強まり、前年末比185円安の2万7258円で引けた。米国のダウ工業株30種平均は昨年末に3万606ドルと過去最高値を更新して終わった。日経平均は過去最高値に比べなお1万円以上の開きがある。それでも31年ぶりの高値水準にまで戻したとあって、市場には勢いの持続による一段高を期待する強気派が増えている。

 日本経済新聞の正月紙面に載る恒例の「主要企業の経営者20人の株式市場見通し」では、4人が日経平均の今年の高値予想を3万円超と回答していた。

 マスコミ紙誌面、証券アナリスト・レポートなどには威勢のいい見出しが飛び交う。「投資の新時代が到来」「怒濤(どとう)の株高が始まる」「2倍、3倍は当たり前」…。「資産ゼロから1億円」も目にした。ごく一部の個人の投資成功体験を紹介した記事だ。「株を持たざるリスク」といった珍妙な証券営業トークも復活した。いずれも投資家心理をあおる。どこかバブリーな臭いが漂い、いつか来た道を思わせる。

 昨年は相場の2極分化が進んだ年でもあった。東証の33の業種別株価指数の動きに端的に表れている。年間で上昇したのは11業種、下落が22業種だった。下落業種が圧倒的に多かった。

 東証1部銘柄の年間騰落状況をみても、上昇したのは全体の約4割で、残り約6割は下落した。日経平均の上昇もファーストリテイリング、ソフトバンクグループ、東京エレクトロンなど指数算出の影響度が大きいひと握りの銘柄の上げが主導した。コロナショックは企業の存続の可否、成長力の強弱の判断を厳しく問う。銘柄の選択を誤れば投資で痛い目に遭う。

 21年の相場見通しの強気派を支えているのは世界各国で進む中央銀行による市場への緩和マネーの大量供給だ。日本銀行は日経平均が2万7000円台に乗せた昨年の大納会の日にも上場投資信託(ETF)を700億円余購入した。日銀のETF買いは相場の下支えどころか、上値追いの様相さえ帯びだした。

 コロナショック対応を名分にした世界各国の積極財政政策も相場の上昇を後押しする。「財務規律」という言葉は死語になりつつある。将来世代の国家債務の返済負担は増すばかりだ。

 「バブルの形成は不況期のカネ余りから始まる」。野村総合研究所某OBの持論だ。1989年末に日経平均が史上最高値の3万8915円を付けた直近のバブルがそうだった。85年プラザ合意後の急ピッチの円高に伴う景気悪化を懸念した日銀は公定歩合を下げ続け、市場に大量の資金があふれた。バブルの淵源(えんげん)だった。緩和マネーの供給に弾みがつけば、バブルが再発しかねない。

 米国株式市場でブル(Bull=雄牛)は強気の象徴だ。しかし、日本の干支(えと)にちなむ相場格言では「子繁盛」の後に「丑つまずく」が続く。新型コロナ感染の第3波が収束しなければ相場がつまずくことも十分にあり得る。バイデン新米大統領が登場するが、緊張が続く米中関係の動向も気掛かりだ。牛の鳴き声になぞらえれば「モウはまだなり、まだはモウなり」という相場格言もある。「まだ上がる」の声の高まり、広がりは「天井は近し」の要注意シグナルと受け止めたい。

 加藤隆一(かとう・りゅういち) 経済ジャーナリスト。早大卒。日本経済新聞記者、日経QUICKニュース編集委員などを経て2010年からフリー。東京都出身。

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