IT

SBG孫氏「たかだか3兆円」 過去最高益でも見据える課題

 ソフトバンクグループ(SBG)の令和2年4~12月決算は最終利益が3兆円を超え、新型コロナウイルス感染拡大に伴うデジタル化を追い風に、投資会社として軌道に乗りつつある。しかしSBGが目指す投資を通じた“情報革命”の観点にたてば、完璧な業績とはいえないことも事実だ。傘下のソフトバンクが世界的なプラットフォーマーへの転換を宣言する中、投資を実業の成長に結びつける好循環を加速させることが重要となる。

 「たかだか3兆円。まだまだ道半ばだ」。8日の決算会見で孫正義会長兼社長は強調した。謙遜にも映るが、これが孫氏の本音だ。

 新型コロナで非接触など新たな日常が浸透する中、IT企業の多くは急成長を遂げている。世界のIT企業に投資するSBGもその果実を取り込み、投資会社としては万全の決算内容だが、もう一つの顔であるIT企業という観点では、世界の巨大企業と比べると見劣りは否めない。

 孫氏はこの日の会見でSBGについて「金の卵を産む製造業だ」と説明、単なる投資会社ではないと繰り返した。SBGは人工知能(AI)を用いた世界の新興企業に数多く投資しており、こうした企業のノウハウを取り込むことができれば、これまでにない革新的なサービスの創出につながる可能性がある。

 すでに好事例もある。QRコード決済のペイペイは、SBGが投資するインドの決済大手「Paytm」の技術を活用し、わずか2年余りで3500万人が活用する国内有数の決済サービスへと成長した。

 傘下のソフトバンクも4日の決算会見で、4月に社長就任予定の宮川潤一氏が「総合デジタルプラットフォーマーを目指す」と宣言。これまでの携帯電話を中心とした企業から脱却し、通信以外の新領域を伸ばす考えを示している。

 20兆円超の株式資産を持つSBGは、株価下落局面では巨額の損失が生じかねない。安定成長という観点でも実業の充実は不可欠だ。しかしペイペイのような“金の卵”を生み出すのは簡単ではない。SBGが投資後に日本で展開する事業はほかにもあるが、ペイペイのような大きな成長にはつながっていない。

 グループ全体で相乗効果を生み出せる新たな投資先を見つけ育てていけるか、これまで以上に孫氏の目利き力が問われる。(蕎麦谷里志)

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング