コロナ禍で人気沸騰のSNSクラブハウス 「耳市場」の争奪戦始まる
友人同士で雑談したり、著名人の飾り気のない話を聞いたりできる米国発の会員制交流サイト(SNS)「Clubhouse(クラブハウス)」が注目を集めている。新型コロナウイルスの感染拡大で人との付き合い方も大きく変わる中、新しいコミュニケーションの場となりそうだ。録音は禁止されており自由気ままに話せるが、半面、トラブルに巻き込まれる可能性も懸念されている。
聞き逃せない
クラブハウスは昨春、米企業が始めた無料のアプリ。画面に話のテーマを記した「ルーム」がずらりと表示され、中から好きなルームを選んで音声のやりとりができるという仕組み。今月9日には、平井卓也デジタル改革担当相も話し手となって登場した。
現在は米アップル社のiPhone(アイフォーン)やiPad(アイパッド)向けのアプリで、登録にはすでに利用している人から招待を受ける必要がある。日本では今年1月末ごろから著名人の利用が相次ぎ、人気が沸騰した。
「コロナ禍で人と会う機会が減った時代に、偶発的に、共感できる話し手を見つけられる貴重な場になっている」。こう話すのは、昨春、米国で試作版がスタートしたときから利用している米国在住の起業家、山田俊輔さん。昨年末に日本の起業家を招待し、日本でクラブハウスが広まるきっかけを作ったとされる。録音禁止という特徴から「聞き逃すと次がない。何が起きるか予想もつかない。テレビの生放送の感覚に似ているのでは」と語る。
はしご酒に似てる?
京都精華大の吉川昌孝教授(メディア論)は、「声によって、ツイッターなど文字を通じたSNSのやり取りにはない、人肌を感じられるコミュニケーションが生まれている」と指摘する。あちこちのルームで会話を楽しむ様子は、コロナ禍で失われた、立ち飲みのはしごや、喫茶店などで隣の席の面白い話を小耳にはさむ場面の「疑似体験にもなる」と話す。
企業も、新しい音声メディアを活用しようと模索を始めている。駐車場シェアリングサービスのアキッパ(大阪市)は、企業発表に合わせてクラブハウスにルームを開設。「資料に書き切れなかったことなどを話している。興味を持つ人が集まるので、事業提携などに結びつくのではと期待している」といい、営業活動でも活用したい考えだ。
米国では1日深夜に電気自動車メーカー、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)がルームを開設、世界の注目を集めた。共有オフィススペースを運営するカエル(大阪市)の大崎弘子代表取締役は「今も誰かが面白いことをしゃべっているのでは、と気になる」と明かす。