東日本大震災10年
復興を超えた未来へ 起業家の思いが変える社会
今年1月には被災地支援団体に迅速に資金を届ける新たな枠組みも設立。中央共同募金会や大手企業10社と共同で立ち上げた基金を使えば、最短10日程度で支援金を出すことができるという。
CFは新型コロナウイルスをめぐっても、治療にあたる医療従事者らへの支援などで多くの資金を集めている。日本に寄付文化を定着させる仕組み作りを引っ張ってきた米良CEOは「困っている人たちの支えになりたい」と話す。
伝統産業の承継支援「希望の光を持ち続ける」
伝統産業を未来につなぐことを目指し、子供用の木製食器の開発などの事業を手がける「和える」(東京都品川区)の矢島里佳社長(32)も、企業活動で社会を変えようという起業家の一人だ。
東日本大震災発生時は神奈川県鎌倉市でホームページのデザインの打ち合わせをしていた。震災で生活が一変する人も続出する状況だったが、「どんな時でも生まれてくる命がある。だから会社の設立をやめようとは思わなかった」。その5日後、所轄の法務局に設立登記を済ませた。
伝統産業を担う事業者は後継者難で廃業に至るケースも増えており、矢島社長は創業以来1千を超える工房を訪問した知見を生かして事業承継に関するコンサルティング事業も始めた。
「希望の光を持ち続けることが、困難な時代を乗り越える原動力となる」(矢島社長)。そう信じる起業家の強い思いが新しい日本を作っていく原動力となっている。(松村信仁)