高論卓説

中国当局も認めた不動産バブル 崩壊必至、過剰開発のつけ大きく

 中国の立法機関、全国人民代表大会(全人代)に合わせるかのように、中国の不動産バブル関連やスタグフレーションに関する報道が出始めた。日本でもそうであったように、不動産バブルは消費を拡大させ、経済にはプラスの効果が大きい。しかし、バブルは必ず崩壊し、そのダメージは非常に大きなものになる。

 全人代に先駆けて行われた昨年12月の中央経済工作会議では、不動産に関する問題も取り上げられた。今年1月1日から「銀行業金融機関の不動産融資集中度の管理制度制定に関する通知」という銀行の総量規制が公布された。これは当局が不動産価格をバブルと認識し、強制的なリスク管理に入ったことを意味するものである。

 中国の不動産価格であるが、2019年の不動産価格の年収倍率は、中国4大都市の深●(=土へんに川)で35.2倍、上海で25.1倍、北京で23.9倍、広州で16.5倍と、日本で最も年収倍率が高い東京の13.3倍を大幅に上回る状態にあり、バブル時の日本の18倍を大きく上回る状況にある。巨大なバブル状態にあるといえる。

 この状況に対して、深●(=土へんに川)の住宅都市農業開発局は2月、深●(=土へんに川)の不動産価格にガイドラインを設定した。これは実際の市価よりも平均35%安いものであり、ガイドライン以上の価格での不動産広告も禁止された。これは中国版「国土法」ともいえるものだ。

 日本の不動産バブルは、銀行の総量規制と国土利用計画法による価格上限管理により崩壊した。そして、不良債権の増加により銀行の信用不安が広がり、バランスシート不況が到来した。銀行は総量規制に合わせる形で、総融資に対する不動産の割合を減らす必要がある。これは貸し渋り、貸しはがしの大きな原因であり、融資を受けられなくなった人は不動産や資産の購入を諦めることになる。

 また、価格制限は融資の不良債権化を促進する。中国における不動産融資は物件評価の70%までと定められ、ガイドライン価格を評価基準にするとされている。例えば、深●(=土へんに川)では1億円の物件が強制的に6500万円の評価に引き下げられた。つまり、それだけで担保評価割れを起こしているといえる。不良債権化しているわけだ。

 不動産会社の過剰な在庫も大きな問題になり始めている。昨年9月、中国不動産開発3位の恒大集団は全物件を3割引で販売を行った。これは、1月末を目途に償還しなくてはいけない2兆円の債務により、信用不安が発生したためである。債権者の協力により1月危機は逃れたものの巨額の損失が出たのは間違いない。

 2月には、中国産業不動産大手、華夏幸福が銀行や信託会社からの融資遅延を発表し、出資する河北省が協力する形で債務整理に入ったことが報じられている。そもそも14億人の人口に対して、30億人分以上の不動産、そして、さらなる開発計画、これがいつまでも継続できるわけがない。

 今月2日、中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)の郭樹清主席が、国内不動産部門のバブルリスクに懸念を示し、当局もこの事態を注視していることが明らかになった。これまで中国政府は不動産バブルであることを認識しながらそれを黙認してきた。旺盛な個人消費の原資であり、地方政府の財源であり経済発展の礎でもあるからだ。中国政府が今後、この事態をどう処理するのか、世界が注目している。

 渡辺哲也(わたなべ・てつや) 経済評論家。日大法卒。貿易会社に勤務した後、独立。複数の企業運営などに携わる。著書は『突き破る日本経済』など多数。愛知県出身。

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