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ANAなどが仮想旅行サービス 訪日客照準、回復は未知数

 仮想旅行サービスは、ANAホールディングス(HD)だけでなく、競合の日本航空や旅行大手のJTBも注力する方針を表明している。新型コロナウイルス禍で運輸・観光各社は苦しい経営環境が続いており、“苦肉の策”ともいえる仮想旅行の提供で、政府が2030年に6000万人との目標を示す訪日客の回復につなげたい考えだ。ただ、利用者をどの程度集められるかや、現実の旅行需要につなげられるかなどは未知数で、課題も山積している。

 「25年度に全世界の延べ利用者5900万人を目指している。訪日需要につなげたい」。仮想旅行を提供するANAHD傘下企業の幹部は利用者目標についてこう語った。ANAHDの仮想旅行サービスは約20カ国に提供、英語や中国語のほか約10カ国語に対応させる予定だ。利用者の大半は外国人になるとみており、訪日喚起策としての活用が最大の狙いとなる。

 ANAHD傘下では、走行できる車輪とカメラやモニター画面を備えて人間の分身(アバター)として、旅行や買い物を遠隔地で体験できるロボット「ニューミー」を開発してきたアバターイン(東京)が、今夏にニューミーの量産型を発表する。画面の解像度を4Kにするほか、走行安定性を強化するなどして一般への普及を目指す。

 一方、日航は「オンライントリップ」と題して、北海道釧路市などへの旅行を体感できるサービスを提供。申込者には同市の名産品が事前に届き、指定の日時に離着陸の様子や、機内からの景色や現地の観光案内の映像を視聴することで、旅行気分を味わえるという。

 JTBは4月7日に仮想空間上に北海道などの風景を再現して、アジアを中心とした各国の人々が仮想旅行や交流を行うことができるサービスを発表。同サービスを利用する30年時点の仮想の交流人口は、政府の訪日客数目標を上回ると想定している。

 仮想旅行サービスで、各社は実際の訪日需要回復に結びつけようと大きな目標を掲げるが、いずれの社にとっても本業とは異なる未知の事業だ。開発中の映像を公開したJTBは映像の品質の低さが酷評されており、本業ではない事業を本格展開する困難さが浮き彫りになっている。仮想旅行サービスがコロナで苦しむ各社の付け焼き刃の事業と受け取られてしまえば、仮想を現実の旅行需要につなげる狙いも根本から崩れることになりかねない。(大坪玲央)

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