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最強の法務部? マジコン、マリカー…特許権侵害訴訟で勝ち続ける任天堂

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 ゲーム業界を牽引(けんいん)する任天堂。マリオやヨッシーといった看板キャラクターは今も絶大な人気を誇る。2016年のリオ五輪閉会式でのパフォーマンスでは、東京五輪・パラリンピックのプロモーションムービーが流れ、クライマックスでマリオに扮(ふん)した安倍晋三首相(当時)が巨大な土管から登場するという演出が国内外で話題になった。まさに“日本の顔”とも言えるキャラクターの著作権を有する任天堂だが、ネット上には「任天堂法務部は最強」という伝説がある。キャラクターの知的財産をめぐる訴訟で相次いで勝訴したためだ。“最強伝説”はなぜ生まれたのか。

 知的財産権を守る戦い

 ネット上で伝説が生まれたきっかけとされているのが、1982年の「ドンキーコング訴訟」。任天堂の人気ゲーム「ドンキーコング」が、映画「キング・コング」を制作した米大手映画会社「ユニバーサル・スタジオ」の権利を侵害しているとして、ロイヤルティの支払いを求める訴訟を起こしたのだ。「ドンキーコング」のキャラクターやストーリーが、「キング・コング」と酷似し商標を侵害しているというものだったが、この米国での裁判は、ジョン・カービィ弁護士の尽力もあり、1984年に任天党側勝訴で決着がつく。ユニバーサル・スタジオが「キング・コング」の商標権を保有していないことも証明された。

 ゲームソフトの開発は日本の得意分野だが、その海賊版が大量に出回っていることが明らかになると、任天堂は重要な知的財産である著作物の海賊版にも目を光らせるようになる。海賊版の製造はパソコン1台あれば可能とされ、不正が発覚しづらい。だが、不正を黙認すれば被害は広がり、インターネットを介して世界に流れてしまう恐れもある。任天堂は「マジコン」の対策に力を入れた。

 マジコンとは、違法コピーしたゲームソフトを携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」などで使えるようにする機器だ。正式名称は「マジックコンピューター」で、専用ソフトと同じ形状をしている。DSには複製ソフトの使用を防ぐ機能があったものの、インターネット上で不正に公開されているソフトのデータをSDカードなどの記録媒体に取り込み、マジコンに挿入してDS本体に差し込めばゲームができてしまっていた。

 任天堂とゲームソフトメーカー54社は2008年、違法に複製されたゲームソフトがニンテンドーDSで使えるようになる機器を販売され損害を被ったとして、機器を扱う5社に対し、不正競争防止法に基づき輸入、販売行為の差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こした。東京地裁は翌2009年、任天堂の請求を認め、5社に輸入・販売の禁止と在庫の廃棄を命じた。

 当時、国内だけで少なくとも数十万台が流通し、全世界の被害総額は3000億円超になると試算されており、任天堂は2009年度の経営方針説明会で、海賊版への対応について「法的・技術的に粘り強く続けていきたい」と強調。それが一つの成果として実を結んだ。

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