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欧米は情報機関との連携でサイバー攻撃に対応

 【ロンドン=板東和正】日本の警察庁が「サイバー局」の創設を通してサイバー捜査を強化することになった。欧米の捜査機関はサイバー戦略に精通する情報機関との協力を進め、ロシアなど国家の関与が疑われる大規模なサイバー攻撃に対応してきた。

 米国では、米連邦捜査局(FBI)が米政府機関の中で高いハッキング能力を持つ国家安全保障局(NSA)と連携し、サイバー攻撃を仕掛けた国家の特定を行っている。

 英BBC放送によると、FBIは今月2日、5月末に発覚した世界最大級の食肉加工企業「JBS」の米国拠点へのサイバー攻撃について、ロシアのハッカー集団「REvil(レビル)」による犯行と発表した。サイバー問題の英専門家は「FBIとNSAの活発な情報共有などが生かされ、早期の特定につながった」と推測する。

 JBSへの攻撃はウイルスの一種「ランサムウエア」を企業に仕掛け、攻撃を停止することと引き換えに「身代金」を脅し取る手口。ロイター通信によれば、米司法省は今月、ランサムウエアによるサイバー攻撃に関する捜査の優先度をテロと同等の水準に引き上げた。攻撃に対する捜査能力を向上するために、捜査機関やサイバーセキュリティーの知見を持つ情報機関の連携が加速しているとみられる。

 サイバー攻撃の捜査をめぐっては、欧米で国家を超えた連携も進んでいる。英通信傍受機関、政府通信本部(GCHQ)傘下の国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)はNSAと協力体制を構築。NCSCとNSAは2019年、ロシア政府系ハッカー集団がイランのサイバースパイ集団になりすまして35カ国にサイバー攻撃を仕掛けていた実態を公表した。

 サイバー捜査の国際協力は今後も強化される見通しだ。今月中旬の先進7カ国首脳会議(G7サミット)で採択された首脳声明は、ロシアや中国のサイバー攻撃を念頭に「ランサムウエアの犯罪ネットワークによる脅威の高まりに緊急に対処する」と明記した。

 欧州連合(EU)欧州委員会は今月23日、EU加盟国がサイバー攻撃の情報を共有できるシステムを導入する計画を公表。22年の稼働をめざす方針だ。

 一方、対外情報機関がない日本が欧米の捜査能力に追いつくのは困難との見方もあり、「G7加盟国などとの連携に出遅れる恐れもある」(専門家)と不安視されている。

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