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三菱電機不正検査 変わらぬ内向き企業体質 

 三菱電機が鉄道向け空調機器で架空のデータを用いる不正な検査を行っていた問題で、架空データを用いて検査結果を自動作成する「専用プログラム」が使われていたことが分かった。不正は開発から生産に至るさまざまな場面や項目で行われており、同社が安心・安全に対する組織的課題を抱えていることが浮かび上がる。過去にも不正検査が相次いでおり、再発防止の取り組みも形骸化していた可能性が高い。外部の指摘を取り入れない内向きな企業体質を問題視する声もあり、組織の抜本的な見直しは不可欠といえそうだ。

 検査不正は、長崎製作所でつくられた鉄道に使われる空調機器と、ブレーキやドアの開閉に使われる空気圧縮機の2つの機器で明らかになっている。問題は不正が単一ではなく、複数の場面で行われていた点だ。

 鉄道に使われる機器などは鉄道会社など顧客からの注文を受けて契約時に購入仕様書を作成。顧客が求める検査もここに記される。

 検査は大きく開発段階で品質を調べる「形式検査」と、量産段階で設計通りに製造されているかどうかを確認する「出荷検査」がある。空気圧縮機の不正が行われたのは、このうち形式検査の段階だ。以前製造されたモデルから変更がなかった部分は仕様書に記された検査を行わず、前モデルの結果を流用していた。

 一方、空調機器の不正は出荷検査で行われた。検査結果の一部を形式検査から流用したり、社内試験要領にある別の方法で検査するなどしていた。不正が行われた項目は空調機器の能力、消費電力、振動など多岐にわたっており、一部の社員による不手際ではないとみられる。

 そもそも、三菱電機ではこれまでもたびたび不正検査が発生。平成30年には鉄道車両などに使われるゴム製品で不正検査が発覚したほか、昨年2月にも産業向け半導体製品で不正が見つかっている。

 不正が繰り返される背景について、ある証券会社のストラテジストは「総合電機メーカーとしての過去の栄光から、事業部ごとの独立性が高い。また、防衛省との取引が多く、秘密主義の傾向もあり経営の目が届きにくい」と語る。

 また、取締役会も社外取締役を5人置くが、元官僚や元検察官、三菱UFJ銀行の元頭取など“天下り”の受け皿のようになっており、「抜け穴だらけのガバナンス体制で、企業体質としては東芝に似ている」とも指摘される。一連の不祥事でも杉山武史社長はトップに座り続けており、取締役会としての機能不全を問う声も高まりそうだ。(蕎麦谷里志、米沢文)

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